いつの時代も、もちろん現代でも多くの人の悩みの種となっている「他人と自分を比べる」という行為。自分と他人の成果を比べて勝ち誇ったり自信をなくしたり……
特に人の情報がたくさん入ってくる今の時代、SNSなど周りの人の人生の中で「いい部分」が集まっている光景を見ていると、自分の人生の「いい部分」と比べて優越感に浸ったり、逆に自分がとても劣って見えて羨ましくなったりと、心の中がざわつくのを経験したことがある方は多いのではないでしょうか。
そんな「比べる」という行為を、2500年以上続く哲学ではどのように分析しているのでしょう。仏教の視点に学んでみます。
他人と自分を比べて「勝っている」「負けている」と自分の中で判断することも、苦しみを生む煩悩に数えられています。「慢(まん)」と呼ばれるこの煩悩は、主に以下の7種に分類されています。
慢:他人に対し、自分より劣っていると判断して優越感に浸ったり、同等であると判断して対抗心を燃やしたりする
過慢(かまん):同等であるはずの人を上から見下す、自分より優れた人を自分と同等であると判断する
慢過慢(まんかまん):自分より優れた人を上から見下す
我慢(がまん):自分が、自分が、とどこまでも我を押し通し、執着する
増上慢(ぞうじょうまん):悟っていないのに「自分は悟った」と言い張るなど、得ていないものを得たと思い込む
卑慢(ひまん):はるかに優れた相手に対し自分は少し劣っているだけだと思い込む。また、自分を卑下することも、自分ほど謙虚なものはあるまいといった慢心の裏返しである
邪慢(じゃまん):徳がないのにあるように見せようとする、本来ならば恥ずべきことを誇る
「これ、経験があるなあ」と思ったものがいくつかあるのではないでしょうか。第107回で紹介したように、自分の心の中のモヤモヤとした思いがカテゴライズされることで、とろける餡をまんじゅうの生地で包むかのように、つかみやすく整理しやすくなります。
「慢」は悟りへ至る段階の中で最後のほうに克服される煩悩と言われ、それだけ人は「比べるのをやめられない」ということでもあります。
それでも、ただ心のモヤモヤに流されているだけよりは、自分の内面を観察し「今、このカテゴリの『慢』があるな」と把握できるほうが少しでも冷静になれて、対処のしようがあるというものです。
これらの「比べようとする心」の中身を知ることで、そのことによる余計な消耗から身を守る方法を模索してみてはいかがでしょう。
■こむぎこをこねたもの、とは?
■著者紹介
Jecy
イラストレーター。LINE Creators Marketにてオリジナルキャラクター「こむぎこをこねたもの」のLINEスタンプを発売し、人気を博す。その後、「こむぎこをこねたもの その2」、「こむぎこをこねたもの その3」、「こむぎこをこねたもの その4」をリリース。そのほか、メルヘン・ファンタジーから科学・哲学まで様々な題材を描き、個人サイトにて発表中。
「週刊こむぎ」は毎週水曜更新予定です。