• 週刊こむぎ


今週のこねたものはお団子になっています。お団子といえば米粉ですが、こむぎこのレシピもあるようです。一風変わったこむぎこのお団子を眺めつつ、今週の内容もいつもご紹介しているものとは少し異なる、浄土宗(開祖:法然)や浄土真宗(開祖:親鸞)の教えに少し触れてみたいと思います。

仏教の修行といえば、お寺に入門し経典を研究したり瞑想をしたりすることですが、これは誰でもできることではありません。日々の仕事や生活に追われお寺に入れない一般の人々に、難解な哲学を届けるのは困難でした。

「誰もが救われてこその仏教では?」と考えた法然は、阿弥陀如来の力を信じ念仏を唱えるという「易行」つまり「誰でもできる修行」を主役に据えることで仏教を爆発的に普及させることに成功しました(阿弥陀如来はすべての人を救い悟りへ導く誓いを立てた仏とされています。鎌倉の大仏が有名です)。

「南無阿弥陀仏:阿弥陀如来を信じます、お縋りします」と唱えて修行をし、浄土に生まれ変わって悟りへと導かれる。この世界観の背後には、「物事は人の力で引き起こすことはできず、仏の力(ここでは阿弥陀如来の力)や縁起(因果関係)によって生じている」という「他力」の哲学があります。

物事は起こるべくして「起こっている」。生きているのではなく「生かされている」。法然の教えを継承・発展させ浄土真宗を開いた親鸞は、「人が良い心を持っているから悪いことをしないのではない。ただ悪いことをしない縁(状況)がそうさせているだけだ」とさえ語りました。

この世に起こるさまざまな問題についても、いろいろな因果が複雑に絡み合ってできる「状況」が人を動かし、「起こっている」と考えることができます。それを個々人が意識的に起こしているという風に捉えると、問題がぼやけてしまうことがあります。

例えば「働きたくない」「働いたら負けだ!」という人が増えているという問題に対し、「働かないのはいけないことだ!」と個人の善悪や行動の是非についての主張をぶつけても、あまり解決の方向には向かっていかないように思われます。

それよりも「働いたら負けだ!」という考えや行動を多くの人に引き起こしている状況とはどんなものであるか、その状況に対しどのように対応していくか…などと考えていく方が、見えてくるものも多いのではないでしょうか。

問題が生じた時、個々の考えや行動の是非よりも「どういった状況が人を動かし問題を生じさせているのか」「その状況をどう変えるか」に着目することで、解決のヒントに近づけることも多々あるはずです。

もっとも、「他力」の考えを突き詰めると「問題を解決する」という行為も「問題そのもの」も存在しないことになるのかもしれませんが…

■こむぎこをこねたもの、とは?

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■著者紹介

Jecy
イラストレーター。LINE Creators Marketにてオリジナルキャラクター「こむぎこをこねたもの」のLINEスタンプを発売し、人気を博す。その後、「こむぎこをこねたもの その2」、「こむぎこをこねたもの その3」、「こむぎこをこねたもの その4」をリリース。そのほか、メルヘン・ファンタジーから科学・哲学まで様々な題材を描き、個人サイトにて発表中。

「週刊こむぎ」は毎週水曜更新予定です。