今年も除夜の鐘の季節がやってきます。こむぎこ寺のこねたものたちも、煩悩への対策を練っているようです。今週は、そんな「煩悩」や「欲望」の正体に迫ってみましょう。
仏教の哲学では「物事は因果関係で成り立っている」という考え方をしますので、もちろんブッダは煩悩にもその大本となる原因があると考え、それを発見しました。あらゆる苦(思いのままにならない不満足感)を生み出す煩悩、さらにその根本にあるものは「無明」(むみょう)と呼ばれます。
「無明」とは「この世のありのままの姿が見えていない」こと、つまり物事を自分勝手に解釈して心を乱している(苦しみを自分自身で作っている)状態のことです。前回紹介したような「妄想」つまり「頭の中にしかないこと」に振り回されて、ありもしない現実を自分の見たいように捏造しているような状態と解釈しても良いかもしれません。
煩悩に振り回されている状態を抜け出すきっかけとなるのが、「無明」を自覚することだとブッダは考えました。人間は、誰もが煩悩や欲望を持っていますし、自分の見たいように世界を解釈し、自分の見たい世界(正しいと思っている考え)を周囲に広めていこうとします。
しかし、それにただ振り回されている状態と、煩悩や無明があると自覚している状態では、思考の整い方が違います。何か満足できないことや、うまくいかないなと思うこと(苦)があるとき、その原因となっている自分の煩悩(欲望)とは何かを把握するように、自分の内面を観察してみましょう。
モヤモヤしたままにしておくと、とても大きな問題に見える悩み事でも「〇〇が欲しいという欲望がある」とか、「〇〇さん(たち)に認められたいという承認欲求がある」といったように、その悩みがどのような欲望に基づいたものであるか、名前を書いた箱に収めてしまうような感覚で整理してみると、冷静になることができ、思考に余裕が生まれてくることがあります。
さらに、その欲望が「〇〇を持っているべきだ」とか「誰々に認められることに価値がある」など自分の頭の中にしかない(もしくは、自分の見たい世界にしかない)価値観によるものだとわかってくると「なんだ、大してこだわるほどのものでもないな」と思えてきたりさえするものです。
煩悩や欲望は、ただ闇雲に抑えようとするのではなく、うまく付き合っていけば自分の思考や心の状態を把握するためのとても便利な手がかりとなるはずです。
■こむぎこをこねたもの、とは?
■著者紹介
Jecy
イラストレーター。LINE Creators Marketにてオリジナルキャラクター「こむぎこをこねたもの」のLINEスタンプを発売し、人気を博す。その後、「こむぎこをこねたもの その2」、「こむぎこをこねたもの その3」、「こむぎこをこねたもの その4」をリリース。そのほか、メルヘン・ファンタジーから科学・哲学まで様々な題材を描き、個人サイトにて発表中。
「週刊こむぎ」は毎週水曜更新予定です。