「莫妄想」(まくもうぞう)という言葉があります。「妄想する莫(な)かれ」という意味の禅の言葉で、中国・唐の禅僧、無業禅師がアドバイスの言葉としてよく用いたものが広まったとされています。
日本でも鎌倉時代、強い元軍との戦でどう戦えばいいものかと悩んでいた北条時宗にアドバイスを求められた禅僧がこの言葉をかけたと言われています。時宗はこれをきっかけに悩むのをやめて、できる限りの軍備を整えるなど、全力で行動に移し方針を固めることができたそうです。
「妄想」は「頭の中だけにあるもの」のことですので、「莫妄想」という言葉は「頭の中だけのものに振り回されるのをやめなさい」と解釈することができます。
自分の頭1つあれば、モヤモヤとした悩みや思い込みを膨らませることも、いつでもどこでも(無意識にでも)無限にできてしまいます。失敗するのではという不安や、あの人は私を嫌っている・見下しているというような疑念、他人への一方的な期待や、自分は優れている・劣っているという思い込みなどなど…
悩むことそれ自体が悩みを膨らませ、妄想はこねりが転がしている雪玉のように動かせば動かすほど大きくなって、自分の本当にすべきことを停滞させてしまいます。
妄想に振り回されないようにするには、まず自分を悩ませているモヤモヤとしたものが「頭の中にしかないものだ」と理解することが大切です。座禅や瞑想の方法で「空気の流れやお腹の膨らみを意識して呼吸をしましょう」とよくあるのは、「リアルな感覚」を意識することで「頭の中にしかない」ものを区別・整理する練習を兼ねていたりもするようです。
北条時宗は、頭の中だけにある「どう戦えばいいか」という不安に振り回されるのをやめ、今ある装備という「リアル」に目を向け、できる限りの行動をすることでモヤモヤとした状態を打開していきました。
悩みや思い込みに行動を阻まれていると感じたら、考えを整理したりリアルな感覚に集中して「頭の中にしかないもの」を把握してみると良いでしょう。
■今回登場したのは、禅のぼさつが宿った「こねり」
■著者紹介
Jecy
イラストレーター。LINE Creators Marketにてオリジナルキャラクター「こむぎこをこねたもの」のLINEスタンプを発売し、人気を博す。その後、「こむぎこをこねたもの その2」、「こむぎこをこねたもの その3」、「こむぎこをこねたもの その4」をリリース。そのほか、メルヘン・ファンタジーから科学・哲学まで様々な題材を描き、個人サイトにて発表中。
「週刊こむぎ」は毎週水曜更新予定です。