ブッダが亡くなった後、インドで仏教は修行の方針などにより大きく2つの派閥に別れます。主に東南アジアへ伝わった「上座部仏教」と中国・日本などに伝わった「大乗仏教」です。

自分自身の修行を突き詰め、悟りの境地に至ることが目標の上座部仏教に対し、多くの人と一緒に悟りを得て救われようという考え方をする大乗仏教では、自らの修行の他に、他人のためになる行い(利他行)をすることが重要とされています。

「利他行」の中には「布施」というものがあり「見返りを求めることなく他人の喜ぶことをする」つまり役に立つ物や知識を他人に与えることなどを修行として行うのですが、一方で財産や知識がなくても行える、下のような「無財の七施」というものも定義されています。

  • 眼施(がんせ/げんせ): 優しい眼差しで相手に接する

  • 和顔施(わがんせ): 笑顔など、おだやかな表情で接する
    おだやかな表情で接することが他人のためになるという考えです。相手の優しい表情や眼差しにホッとさせられた経験のある方は多いのではないでしょうか。

  • 言辞施(ごんじせ): 優しい言葉を使って話す
    丁寧でやわらかな言葉遣いで話すことが、相手を安心させコミュニケーションを円滑にします。感謝や労りの言葉を伝えることも大切です。

  • 心施(しんせ): 思いやりの心を持つ
    他者の立場に立って考え、心配りをすることです。話をじっくりと聞いて相手の言い分を理解すること、更に喜びや悩みに共感できると尚良いはずです。

  • 身施(しんせ): 自分の身体で相手のためにできることをする
    良いことや他人の役に立つことを思いついたら、それを実行に移すという考えです。

  • 床座施(しょうざせ): 席や場所を譲る
    もし自分の憧れていた仕事やポジション等を他の人が得たとして、それを応援することも「場所を譲る」と考えることができます。

  • 房舎施(ぼうしゃせ): 家や部屋を提供する
    やるべきことに集中できる環境を整えたり、分け隔てなくあたたかい心で来客をもてなすことと考えても良いでしょう。

心掛けひとつでできるこれらの行いは、友人など身近な人との関わりはもちろん、仕事にも応用できます。例えば、和顔施・言辞施・心施を意識してやり取りを行うことで安心してコミュニケーションを取ることができ、何か問題が発生した時でもそれを報告・相談しやすく、早期に対処できる環境が出来上がるのではないでしょうか。

他者がいて成立する「利他行」の心掛けは、グループで物事に取り組む際にきっと役に立つはずです。

■こむぎこをこねたもの、とは?

■著者紹介

Jecy
イラストレーター。LINE Creators Marketにてオリジナルキャラクター「こむぎこをこねたもの」のLINEスタンプを発売し、人気を博す。その後、「こむぎこをこねたもの その2」、「こむぎこをこねたもの その3」、「こむぎこをこねたもの その4」をリリース。そのほか、メルヘン・ファンタジーから科学・哲学まで様々な題材を描き、個人サイトにて発表中。

「週刊こむぎ」は毎週水曜更新予定です。