子どもの時から知っている近所の親しい男の子が、来月10月15日にメジャーデビューすることとなりました。パチパチパチ…! 「The New Classics」という静かな熱いラップを歌う男性ボーカルの3人組みなのですが、その男の子は、あのクール&ザ・ギャングスのオリジナルメンバーであるジョージ・ブラウンの息子だったのです。デビューすることになって初めて知ったのですが、2度ビックリです!

ところで、アーティストや芸人、タレント事務所には給与制のところもたくさんありますが、その社員であるアーティストや芸人、タレントに対し、職務上必要な教育訓練を行ったら、やはり人材投資促進税制の対象となるんでしょうかね…税務署さん。

さて前回に引き続き今回も、制度の内容について適用範囲や注意事項など、具体的に解説していきたいと思います。

適用微妙な書籍の購入費

ただ、これまでは人材投資促進税制の適用可能な支出を中心に解説してきましたが、ちょっと視点を変えて、適用範囲に入りそうで入らないものを解説していくことにしましょう。

特に適用を受けられるのか受けられないのか微妙なのが、書籍の購入費です。前回は、「研修用資料などの教材費について、書籍などの資料や、実習用材料などの教材に加え、教材作成の際に生じるライセンス料や監修料などの費用も対象となります」と解説しました。ところが、書籍であったとしても、独学用や図書館、資料室用の書籍は対象とならないのです。

図書館、資料室用の書籍は、直接は人材投資促進税制の目的である人材の育成、強化のための教育訓練費でありませんので、わからないでもないのですが、独学用の書籍もダメなんですね。でも、eラーニングのための教科書は対象となるんですよね。eラーニングって独学のような気がするのですが…ビデオやテープの付いた教材もOKですから、要はコンピュータでも、ビデオでも、テープでいいので、人に教えてもらえるものであればいいということでしょうか。

だからといって、そのコンテンツを自社で製作する場合の人件費、材料購入費、印刷費などは対象とはなりません。これは、前回解説した研修会で自社の役員や使用人を講師とした場合の人件費などが対象とはならないのと通じています。

人材投資促進税制を活用するには、要は、なんでも内部のリソースを使うのではなく、外部のリソースを使えということになります。

外部の研修参加費の範囲

外部のリソースを使うということであるならば、最も手っ取り早いのが、他者が主催する外部の研修会や講習会に参加することです。また、他者が主催するのであれば、教育訓練等の一環として資格、検定試験が行われる場合には、その受験手数料までが対象となってきます。

驚きなのが、その適用範囲が国内外の留学のための授業料や教科書などの購入費にまで及ぶということです。さすがに、留学期間中にその人に支払う人件費や大学院等への寄付金、留学のために必要となる旅費や保険料、住居費などは対象とはなりませんが、結構驚きです(ところで、一般企業の社員で国内留学ってあまり聞かないですよね)。

もっとも、いくら外部の研修参加費だからといっても、業務上必要な技術や知識を習得したり、免許や資格を修得するための研修会や講習会等の費用として適正なもの以外の費用であれば、残念ながら対象となりません。仕事につながらない自分の趣味のための資格取得や勉強のための費用は、対象とならないということですね。

残念ながら実は…

これまで人材投資促進税制の解説を続けていましたが、残念ながら、この法律は平成20年4月1日以降に開始する事業年度から法律が改正されて適用を受けることができないのです(私が謝ることではないのですが期待をされた方は)ごめんなさい。

平成20年10月9日現在ですと、平成19年4月1日以降に新事業年度が始まっていない事業者はまたまだ多いと思います。

この法律のイイところは、決算期末まで実行すれば、決算期末ギリギリでも適用を受けられるということです。決算期末が近づいてきてから比較的大きな支出をしても、他の多くの支出は特例がないどころか、一括で費用にすることすらできないものがほとんどですので、適用を受けられそうな場合は、引き続き是非とも活用できないかどうか検討をして頂きたいと思います。

では、どのように改正されたかというと、名前も「中小企業者等における教育訓練費の税額控除」というものに変わり、対象が中小企業だけになってしまいました。しかもその内容は、平成20年4月1日から平成21年3月31日までの間に開始する事業年度において、損金算入される労務費の額のうちに教育訓練費の額の占める「教育訓練費割合」が0.15%以上である場合に、その損金算入された教育訓練費の額について、下記の税額控除を認めるというものに改正されています。

教育訓練費割合 税額控除限度額
0.15%未満 なし
0.15%以上0.25%未満 教育訓練費×(教育訓練費割合-0.15%)×40+8%(0.1%未満切捨て)
0.25%以上 教育訓練費×12%

これってどういうこと?

中小企業者等における教育訓練費の税額控除は、人材投資促進税制と比較するとちょっとわかりにくいですね。最後にシミュレーションをしてみましょう。

従業員10名、給与賞与の年間支給総額が5,000万円の企業があった場合、中小企業者等における教育訓練費の税額控除を受けるためには、教育訓練費の支出が年間

5,000万円×0.15%=7.5万円

以上あればいいことになりますので、前2事業年度の平均額(基準額)より増加しだ場合しか受けることができない人材投資促進税制よりハードルは低いといえるでしょう。

ではその効果はというと、教育訓練費の支出が年間30万円の場合、

30万円/5,000万円=0.6%

ですので、最大で

30万円×12%=3.6万円

の税額控除をとれることとなります。30万円を支出したことにより減少する税金は、

30万円×40%=12万円 

ですから、この企業は30万円の支出に対して、3.6万円と12万円の15.6万円の節税額に残念ながらとどまることとなってしまいます。ハードルは多少高かったものの、人材投資促進税制がなくなって本当に残念な限りです。

(税理士・行政書士 杉山靖彦)