本連載では、『プログラミング言語恐怖症』の筆者が、サイボウズが提供するノーコード開発ツール「kintone(キントーン)」を使って気ままに業務アプリを作り、それを紹介している。前回は、バラバラに管理していた取材の企画書を一元化・可視化し、編集部内のメンバーとも共有できるアプリを作った。
今回は、企業のロゴや人物の写真といった記事で使用する素材を、編集部内で共有できるアプリを作ろうと思う。自分で撮影もしくは取得したあらゆる素材を編集部のメンバーで共有することで、記事作成の手間を省き、効率を上げることが目的だ。
kintoneによるアプリ開発にはだんだん慣れてきたが、まだまだ素人だ。開発するアプリのクオリティには目をつむっていただきたい。
みんなが撮影した素材を共有したい!
今回、開発したいのは、編集部のメンバーが取材などで撮影した写真・動画や、企業から配布された発表会のプレゼンテーション資料といった、記事内で使えそうな素材を編集部全体で共有できるようにするアプリだ。
例えば、ある企業の本社ビルに掲げられたロゴの写真や、インタビューで撮影した社長の写真、話題となっている新製品の発表会で撮影した動画など、個人で取得した素材を編集部全員でシェアしたい。
マイナビニュースでは、「ワーク&ライフ」や「エンタメ」、「デジタル」、「テック」など、チャンネルが多岐にわたる。そのため、すべての編集部が共通で使えるようなストックフォトサービスを利用している。報道用に特化したストックフォトサービスではないため、企業ロゴといった素材が少ない。
筆者が所属しているTECH+の編集部では、報道系の取材が比較的多いため、自分で撮影したさまざまな素材を個人で保管している。たまにSlack上で共有したり、「○○さん、この記事のこの写真を使いたいので、共有してもらってもいいですか」と直接メッセージを送ったりすることもある。
これが面倒なので、あらゆる素材を一括で管理・共有できるアプリを開発したい。素材を共有する環境を整えることで、編集部のメンバーが今まで以上に素材を集めようとしてくれるかもしれない。乏しいkintoneの知識を生かして、早速アプリを作っていこう。
たった5分で「素材共有アプリ」が出来上がり
前回・前々回と同様、自分で一からkintoneのアプリを作りたいので「はじめから作成」を選択する。なお、kintoneのアプリでは、既存のExcelファイルやCSVファイルなどを読み込んで作ることもできる。また、さまざまな業務に使えるひな形(サンプルアプリ)が用意されおり、顧客管理アプリ、日報アプリ、案件管理アプリ、交通費申請アプリ、アンケートアプリなど、すぐに使えるアプリが多い。
アプリの作成画面に移った。アプリに必要な入力項目(フィールド)をどんどん追加していこう。ドラッグ&ドロップでシュシュっと組み立てられるから面白い。自分はシゴデキ(仕事ができる人)なのだろうか……と錯覚してしまう。
素材を共有するにあたって、その素材に関連する「企業名」と「素材タイトル」は必要そうだ。テキストを入力できる「文字列(1行)」を追加しよう。編集することでフィールド名は変更できる。
そして、「作成者」と「作成日時」の情報も欲しい。誰が共有した素材なのかを分かった方が使いやすいだろう。自動入力されるフィールドを追加する。
この素材は、いつ・どこで撮影または取得したものなのか。加えて、自分で撮影したものなのか、企業から提供してもらったものなのかといった具体的な情報も欲しい。企業から提供してもらった写真を、自分で撮影した写真として記事内で使用してしまうと大問題だ。そこで、自由に素材の説明文を記入できる「文字列(複数行)」と、素材の撮影日・取得日をを選択できる「日付」というフィールドを追加した。素材の説明文に関しては、初期値の機能を使って例文を示した。
あとは、あらゆる素材を最大1GBまで添付できる「添付ファイル」を追加していくだけだ。添付できる素材の数が少ないと使いにくいので、とりあえず15個のフィールドを追加した。同じフィールドを連続で追加したい場合は「複製」を使うと便利だ。
よし、これで完成!と思ったが、ある状況が思い浮かび、アプリ公開に踏みとどまった。ある状況とは、レコードに登録した素材と同じような素材を、後の取材や発表会などで手に入れた状況だ。この場合、後から手に入れた同様の素材を同じレコードに追加したいと思うはずだ。
新たな素材を手にした人は、必ずしも登録した人と同じとは限らないため、自動入力される「更新者」と「更新日時」、そして更新者が一言を添えるための「更新者コメント(文字列複数行)」のフィールドを追加した。
これで必要な項目はそろった。ここまでの開発にかかった時間はたったの5分。筆者は、カップ容器入りインスタントうどんの代表格である日清食品グループの『どん兵衛』をこよなく愛し、かなり頻繁に食べる。そのため、体内時計で5分だけは正確に測ることができる。本当だ。アプリの開発にかかった時間は5分だった(と思う)。
「この機能も欲しいな……」試行錯誤しながら開発
素材を共有できるアプリが完成したので、早速登録していこう。「アプリを公開」というボタンをクリックするとアプリにデータを入力できる状態になる。そして右上にある「+」ボタンを押せば、データの登録画面に移る。
個人的に管理している素材をいくつか登録してみた。まずは、ソフトバンクグループの孫正義会長の写真をいくつか添付。これらは新事業説明会に登壇した際の写真で、そのときのプレゼンテーション資料も添付した。
サイボウズの企業ロゴ、そしてkintoneのサービスロゴの写真も持っていたので登録した。筆者もよく使う素材だが、他のメンバーにも使ってもらいたい。また、取材する機会が少ない日立製作所の「大みか事業所」に関する写真素材も登録してみた。「外観のみ提供素材」と説明文に記入し、自分で撮影したものと提供素材を区別した。
データの一覧画面に戻ると、アプリに登録されているデータが一覧表示されているのを確認できる。画面上にある「絞り込む」アイコンをクリックし、条件を指定することでデータの絞り込みも可能だ。例えば、「社名=サイボウズ」と絞り込むと、該当するデータのみ反映される。まだデータを3件しか登録してないため、恩恵が感じられないが、データが増えてくれば便利そうだ。
だが、さらに絞り込みの精度を上げられそうだ……。企業名や作成者、素材のタイトルでの絞り込みでは、素材の種類が統一されていないことに気が付いた。
kintoneでは、作成したアプリを後から修正することもできる。編集画面に戻り、素材を「企業ロゴ」「人物の写真」「施設の写真」「プレゼンテーション資料」の4つに分別できるようにするために、「チェックボックス」というフィールドを追加した。
アプリの再編集により、「企業名=サイボウズ」かつ「該当する素材=企業ロゴ」といったように絞り込みの精度を高めることができた。試行錯誤しながら開発できるのはkintoneの良いところだと思う。
しかし、今回を含め、今まで開発してきたアプリには、まだまだ改善の余地があるはずだ。kintoneのテレビCMに登場する、俳優の豊川悦司さん演じる「文系出身の部長」のように、“痒い所に手が届く”業務アプリを作ってみたい……。
そこで、次回は、kintoneのサポートセンターの手を借りながら、今まで作ってきた業務アプリをブラッシュアップしていく様子を紹介していこう。「まあまあ使えるアプリ」が「本当に使えるアプリ」に進化していく過程を、どうか見届けてほしい。