本連載では、『プログラミング言語恐怖症』の筆者が、サイボウズが提供するノーコード開発ツール「kintone(キントーン)」を使って気ままに業務アプリを作り、それを紹介している。前回は、広報担当者の情報を一元的に管理できる「プロフィール帳」を作った。
今回は、思いついた取材ネタを記録するアプリを作ろうと思う。バラバラに管理していた取材の企画書を一元化・可視化し、編集部内のメンバーとも共有できるアプリを作ってみる。kintone初心者が手探りで開発するため、アプリのクオリティには目をつむっていただきたい。
“鮮度の高い”アイデアを記録・共有したい!
アプリ名は「取材ネタ帳」。このアプリで一番実現したいことは、思いついた取材のネタを一覧で管理し、それを編集部内のメンバーで共有できるようにすること。普段から編集部内で取材ネタや記事の切り口のアイデアなどは定期的に共有しているが、kintoneアプリによって、鮮度の高いアイデアを場所や時間にとらわれることなく共有したいと考えた。
また、レコードを追加していくだけなので、気軽にアイデアを共有できる環境も構築できそうだ。筆者はこれまで、思いついた取材ネタはiPhoneのメモ機能などで記録していた。他のメンバーの目に触れる場所に記録し迅速にフィードバックをもらうことで、より深みのある切り口に仕上がるかもしれない。では早速作っていこう。
豊富な機能でサクサク開発
今回作りたいアプリは、取材までのスケジュール調整や、記事掲載の管理などを行うアプリではない。あくまでもアイデアベースのネタを記録・共有するアプリだ。
kintoneでアプリを作成する手順を簡単におさらいしておこう。まずkintoneにログインすると、「アプリ」という項目がある。表示されたボタンをクリックすると、アプリの作成方法を選択する画面になる。今回も「はじめから作成」を選択し、自由な形式でアプリを開発する。
アプリの作成画面(フォームの編集画面)が表示されるので、アプリのタイトルを「取材ネタ帳」に変更した。また、先日取材したサイボウズのイベント「kintone hive」に登壇した山豊工建の活用事例から学んだことを生かして、アプリのアイコンを自分で作成したものに変更した。
次に、アプリに必要な入力項目(フィールド)を追加していった。ドラッグ&ドロップでテキストを入力できる「文字列」や、日付を選択できる「日付」、作成者の氏名が自動で反映される「作成者」などを追加していく。
まずは「取材ネタのテーマ」と「作成者」は欠かせないだろう。取材ネタのテーマは、記事タイトルのような役割をイメージ。20字前後で端的に表すことで、レコードの一覧を表示した際に、一目で内容が分かるようにしたい。
次に、「文字数(複数行)」をドラッグ&ドロップで追加し、読者に何を伝えたいのかを記述する項目や、どのよう情報が必要かを箇条書きで示す項目、取材を依頼する際に想定される企業や担当者の項目も設けた。
このネタの記事を執筆した際、いつの公開が適しているかという情報も必要だろう。そこで、このネタの旬がいつなのか、そしてそう思うに至った理由を記録する項目を「日付」と「文字列」を使って追加した。
企業のニュースリリースや関連する過去記事、他媒体のコンテンツ、SNS情報など、参考になる文献を記録しておく項目も欲しいと思ったので、メールアドレスやWebサイトのURLを記入できる「リンク」を追加した。また、URLだけでなく、写真データやPDFにも対応できるように「添付ファイル」も追加。
そして、「ラジオボタン」を活用して優先度を3段階で示せるようにし、コンテンツの形式(記事や映像など)を選択できる項目も「ドロップダウン」を使って追加した。
アイデア段階のレコードなので必要ないかもしれないが、いろんな機能を使ってみたい。必須項目に設定していないので空欄でもOKだ。ほかの編集部メンバーには申し訳ないが、アプリ開発者素人の自己満足に付き合ってもらおう。
最後に、他のメンバーに対するコメントを残すための項目を追加した。つなげてほしい企業の担当者や、協力してほしい事項の記載などを想定している。「リッチエディター」を追加して、自由なフォーマットで記入できるようにした。
『取材ネタ帳』が完成! しかし改善点も……
必要なフィールドをすべて追加し編集できたので、「アプリを公開」というボタンをクリックした。すると、アプリにデータを入力できる状態になった。右上にある「+」ボタンを押せば、データの登録画面になる。
早速、思いついた取材のネタを登録してみた。防災の日(9月1日)が近いので、エレベーターの技術に迫る企画を考えてみた。
また、前回と同様に、アプリのデザインテーマも変更した。kintoneの黄色とマッチしそうな緑色のテーマに変更してみた。レコードを追加するのが面白くなって、いろんな取材のネタを追加した。編集部のメンバーは気に入ってくれるだろうか。
改善すべき点もある。まず、「文字列」のフィールドが多いため、すべての項目を入力するとなると面倒かもしれない。前述したkintone hiveでの山豊工建の講演では、「レコードを効率よく登録してもらうためには、入力項目は最小限にしたほうが良い。文字列入力は最終手段だ」ということが紹介されていた。
今回のアプリは申請系のアプリではなく、能動的に登録してもらうことを想定しているので一概に比較はできないが、改善の余地はあるはずだ。
また、アイデアベースの情報を登録するアプリではあるが、取材の進捗状況や掲載スケジュール、PV(ページビュー)数なども併せて管理できたら便利そうだ。アプリのUX/UIについては今後、編集部のメンバーから意見をもらって改善していこうと思う。