少し前になるが2020年1月、アメリカのラスベガスで開催された「CES 2020」でとんでもないクルマが発表された。
それは、メルセデス・ベンツの「VISION AVTR」。このクルマは、「BCI(ブレインコンピュータインタフェース)」を使って脳波でクルマを運転できるというコンセプトを持つ。つまり、アクセルやブレーキペダル、ステアリングなどはないのだ。
そして、ドイツのミュンヘンで開催された「IAA Mobility2021」において、BCIの特徴が公開された。では、メルセデスベンツのVISION AVTRとはどのようなクルマなのか、今回はそんな話題について紹介したいと思う。
メルセデスベンツのVISION AVTRとは?
メルセデス・ベンツが2020年1月に発表した、近未来感たっぷりのクルマ「VISION AVTR」。
AVTRという名称は、映画「アバター」のグローバルパートナーシップにより開発された自動運転EVであるということと、「ADVANCED VEHICLE TRANSFORMATION」の略から来ているようだ。
まず、このVISION AVTRはどのように運転するのか紹介したい。
ミュンヘンで開催された「IAA Mobility 2021」での発表によると、運転者は頭部にBCIを装着する。
BCIといえば、脳に埋め込むタイプもあるが、現在のVISION AVTRでは、ヘッドセットに近い状態で頭部に装着するタイプだ。
ダッシュボードに表示されるさまざまなインジケータを視覚的に運転者は認識する。運転者の大脳皮質が反応することによって生じる脳波をBCIが計測、分析。
BCIの分析した信号をVISION AVTRのオンボードコンピュータへ送信し、クルマが操縦されるというものだ。
BCIを通じて脳波でクルマを操縦するのは、前進、後退、停止だけではない。目的地の設置、車内インテリアの照明の調整、ラジオの線局、音量調整などもできるようだ。
車内のインテリアを下図でご覧いただきたい。
従来のクルマのように、ダッシュボードにインパネもなく速度メータ、タコメータなどは見当たらない。ダッシュボードには、運転中のさまざまなデータが光として可視化された状態で表示されるという。
流線形を基調とし座席間の中央にあるセンターコンソールに手を置いて手動で直感的な運転することも可能という。
他にも、VISION AVTRのすごいところを紹介したい。それは、「バイオニックフラップ」だ。
バイオニックフラップは、VISION AVTR車体の後部に取り付けられているもの。33個も取り付けられている。さまざまなメディアでは、まるで爬虫類のようだと評されている。
このバイオニックフラップはどのような目的があるのかというと、従来のクルマではあまりみられない横方向の移動が可能となる。このバイオニックフラップは、空気の力を利用して移動させるという。これにより狭い場所の駐車なども容易になるのだろう。
VISION AVTRは、サステナブル、環境という点にもこだわっている。EVとしてバッテリーは、種類などは特定できなかったものの、金属、希土類もまったく使わない肥料化することも可能な有機化学系の電池を使うという。
また、シートも環境に配慮したものとなっている。再利用のポリエステル繊維と水系ポリウレタンを使用した人工スウェード「Dinamica」を使用。ウッド部分には成長の早い「Karuun」という天然素材を用いるという。
ホイールもとても先進的だ。ホイールにモータが内蔵されていて、476馬力以上のパワーを出力できる点も驚きだ。
VISION AVTRは動画も配信されている。ぜひご覧いただきたい。
いかがだっただろうか。読者のみなさんは、未来のクルマはどのようになると予想されているだろうか。
少なくともメルセデス・ベンツのVISION AVTRは、未来のクルマに対する“共通認識”の1つとして多くの人に捉えられていることは間違いないだろう。このコンセプトを越えようと各社競うことになるのだろうか。今後が楽しみだ。