シカゴ大学コンピュータサイエンス学部の「Human Computer Integration Lab」では、とても興味深い研究が多数行われている。
EMSなどの電気信号を活用して触覚や臭覚など人間の感覚に関する研究などだ。そのなかに、EMSを生体認証に活用できる研究がある。その名も「ElectricAuth」。ではこのElectricAuthとはどのようなものなのか、今回は、そんな話題について、紹介したいと思う。
EMSを生体認証に活用できるElectricAuthとは?
EMSという言葉を耳にしたことがあるかたも多いだろう。EMSとは、「Electrical Muscle Stimulation」の略称で、電気刺激を筋肉に与えることで、筋肉の収縮運動を誘発させるもの。よくお腹にパッドを貼り付けて電気信号でピクピクと腹筋を動かすトレーニング器具などに使われている技術だ。
このEMSを使うことで生体認証を行うことができる、そんな研究がシカゴ大学で行われている。では、どのようなものなのか説明したい。
前腕にパッドを取り付け電気信号を送る。するとその電気信号に応じて指が勝手に動くのだ。上記で説明した腹筋のトレーニング器具の腕バージョンと理解していただくとわかりやすいだろう。
この電気信号に対する指の反応というのは、人によって異なるという。それは、個人個人の骨格や筋肉のつき方、皮膚の電気抵抗、皮膚組織の組成などが異なるためだ。つまり、生体認証として利用できることを意味するのだ。
以下にシカゴ大学のElectricAuthの動画があるのでぜひご覧いただきたい。
興味深いシーンがある。この電気信号の送るタイミングを変えると、指の反応をさまざま変えることができる。例えば腕に装着するパッドの数(電気信号の数)を6つ、そして電気信号の送るタイミングの数を7パターンにすると、実に6,884万1,472通りの指の反応をユニークに得ることができるのだ。
パソコンやアプリへのログイン、銀行ATMへの引き落としなどの際には、パスワードが必要だ。しかし、このElectricAuthを使えばパスワードは必要ない。パスワードなどを記憶しておく必要もない。さらに、なりすましによる不正ログインに対する耐性も高いという特徴がある。さらには、このElectricAuthの生体認証は、1秒程度の時間で完了するという。
いかがだっただろうか。
生体認証にEMSが利用できるという発想にとても驚く。
現代では数多くのアプリをダウンロードし、その分のパスワードを管理しなければならず、定期的な変更となると、パスワード自体を管理アプリなどで管理しなければ、失念してしまう、そんなかたも多いのではないだろうか。
そのパスワード管理アプリがもし脆弱であれば……と危険に感じることもあるだろう。これはあくまでも一例だが、このElectricAuthは、自分の生体がパスワードとして機能し、電気信号を送るタイミングを変えることでさまざまなパターンも作ることもでき、とても強固なセキュリティー耐性を作れるという点に魅力を感じる。
このElectricAuthのような生体認証が採用される未来はいつごろになるだろうか。