京都大学の理学研究科、藤浩明 准教授や同大学の林智恒氏らの研究グループは、津波に伴う海底磁場の変化が津波そのものより早く現れること、津波により発生した海底磁場から精度良く津波の波高が予測できることを明らかにしたと報じた。

この研究結果は、津波による被害を早期に予測し、低減できる策に関して今後改善に役立てられる可能性があるという。今回は、そんな話題について、紹介したいと思う。

津波の磁場とは?

まず、地震発生後に起こる津波から磁場が発生することはご存知だっただろうか。

この磁場のことを「津波磁場」という(論文上※1では、tsunami magnetic fieldと表記されている)。

このことが初めて分かったのは、2006年11月と2007年1月の千島海溝での地震だったいう。京都大学の理学研究科藤浩明准教授らの研究グループは、当時それぞれの地震の震央から700km~800km離れた海底観測点で得られた電磁場データを解析。津波の予想到達時刻付近では大きな電磁場変化が観測される、ということを発見したのだ。

では、津波磁場はなぜ発生するのだろうか。津波磁場は地磁気によって移動している導電性海水が津波によって起電力が発生し、それによって生成される磁場のことを指す。

そして津波磁場は津波の海面変化よりも早く到着することがわかっているのだ。ちなみに、津波磁場は、海底長期電磁場観測ステーション(SeaFloor ElectroMagnetic Station:SFEMS)という海底に設定されたセンサーシステムによって観測されている。

  • 海底長期電磁場観測ステーション(SeaFloor ElectroMagnetic Station:SFEMS)

    海底長期電磁場観測ステーション(SeaFloor ElectroMagnetic Station:SFEMS)(出典:京都大学)

今回、京都大学の藤准教授らの研究グループは、2009年のサモア沖地震と2010年のチリ地震の観測データを分析。その結果、海底の磁場は波源から数千km離れた場所でも検出されること、磁場(鉛直成分)は、津波より早く変化すること、磁場のデータを解析することで津波の波高に精度良く変換できることを示した。

  • 予測した結果

    観測地域とその広域図。右上の波形は2009年のサモア地震津波の波高を、磁場から予測した結果(出典:京都大学)

では、この津波磁場によって、どのようなことができるのだろうか。

そう、津波の警戒に役立てることができるのだ。藤准教授らの研究グループは、津波早期警戒法という言葉を使っている。

ただし、この磁場を用いた津波の波高推定には、海底下の電気的構造をあらかじめ知っておく必要があるという。海底下の岩石は絶縁体ではなく、「海底下電気伝導度構造」といって、ある程度の電気伝導度があり、深さによっても変化するため、この構造を先に突き止めておく必要がある。

いかがだっただろうか。

地震の発生の予測は困難であるという話はよく耳にする。どの程度困難なのかは不明だが、地震発生という事象が発生した後に、地震の規模やどれくらいの高さの津波が到達するのかという情報の研究は日本はとても進んでいると感じる。

自然災害は、早期に警戒し、起きた後すぐに制御していく、そのような未来だろうか。

文中注釈

※1https://agupubs.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1029/2021JB022760