医療、介護の現場では「床ずれ」は悩ましい問題だろう。症状が悪化し、深刻になればなるほど、患者さん、介護されているかたの負担は想像を超えたものになる。
そんな中、東京大学はこの床ずれの治療を可能にする装置を開発。マウスなどの実験を経てこの装置の開発に至ったようだ。今回は、そんな話題ついて、紹介したいと思う。
東京大学の褥瘡治療用振動器「リラウェーブ」とは?
床ずれとは、医学用語で褥瘡(じょくそう)という。装置名には、この褥瘡という言葉が使われるが、本文ではわかりやすく床ずれという表現を使うことにしたい。
床ずれは、長時間、同じ姿勢で寝たままの状態や座ったままの状態が続くことで、布団や車椅子などと皮膚が触れて、その皮膚が圧迫され、血行が悪くなることで起こる症状のことだ。
他にもさまざまな原因があるようだが、症状が悪化すると、その皮膚の組織が壊死してしまうこともある。寝たきりの状態の患者さんや介護されているかたは、どうしても床ずれというものを回避することが難しいのが実情だろう。
そんな中、東京大学は、褥瘡治療用振動器「リラウェーブ」という装置を開発した。同装置は、マツダマイクロニクスと共同で開発されたもの。
リラウェーブは、簡単に持ち運びもでき、操作も簡単な点が特徴だ。
リラウェーブの仕組み
では、どのように床ずれを治療するのだろうか。
リラウェーブは、47Hzの振動を発生。エアマットレスなどを通じて、身体へ振動を与えて、筋肉や皮膚、自律神経などを刺激する。
これにより、血行が促進され、床ずれの原因である血行不良を解消することができるのだ。また、リラウェーブはコントローラが付いている。振動の強さ、パターンがそれぞれ4つが準備されていて、患者さんや介護されるかた自身が最も気持ちよい条件に調節することも可能だ。
では、実際のところリラウェーブによって床ずれは、改善されたのだろうか。
1日3回、15分の加振をリラウェーブによって被験者に行った実験では、床ずれの改善が見られ、6回の加振で、症状が軽い床ずれが完全に消滅したケースもあったという。
いかがだっただろうか。
この東京大学が開発したリラウェーブは、特に患者さんや介護されているかたが起き上がったり、なにか特別なことをすることなく、装置からの振動による刺激を寝た状態で受けるだけで、床ずれが改善されるというもの。
おそらくこのような研究が進み、医学とテクノロジーがうまく結びつくことで「床ずれ」という症状は失くなる、そんな未来も近いかもしれない。