1年のうちに、蚊に刺される機会が多い時期はいつだろう。日本であれば夏場が多いだろうか。
お子さんが外で遊んで帰宅すれば、蚊に刺されている痕を目にすることも少なくはない。日本で蚊に刺されることは、気にするようなことでないかもしれないが、世界に目を向ければそうではない。
そんな広い視野を持って蚊から未来の命を守るために立ち上がったプロジェクトを開始した花王。今回は、そんな話題について紹介したいと思う。
世界で最もヒトを殺す生き物とは?
花王は、蚊から未来の命を守るプロジェクトを立ち上げた。では、なぜ“蚊”なのだろうか?実は、こんなデータがある。2014年と古いデータだが、世界で最もヒトを殺す生き物ランキングだ。
読者の皆さんは、世界で最もヒトを殺す生き物はどんな生き物だと思うだろうか。ライオンだろうか、サメだろうか、もしくはワニだろうか。獰猛な肉食動物を思い浮かべる方もいいと思うが、残念ながら違う。
実は、世界で最もヒトを殺す生き物は、“蚊”なのだ。「あんな小さな生き物が?」と驚くかもしれないが、蚊がヒトを殺す理由は、病気を媒介することだ。
蚊に刺されることで媒介するマラリアで、毎年60万人以上が死亡しているという。他にもデング熱、黄熱病、脳炎などもある。世界では、1年間で72.5万人ものヒトが蚊が媒介する感染症によって亡くなっているのだ。
ちなみに少し話はずれるが、世界で最もヒトを殺す生き物2位は“人間”だ。47.5万人ものヒトが、ヒトによって殺されているというちょっと悲しくなる事実もあるのだ。
花王のプロジェクトとは?
花王は、蚊による感染症・デング熱の被害を削減することを目的にプロジェクトを立ち上げた。
花王の海外現地法人であるタイの花王インダストリアルでは、2021年6月にタイ保健省、タイ工業団地公社(IEAT)、タイ国立電子コンピュータ技術研究センター(NECTEC)、アマタ・コーポレーションと、デング熱の蔓延を抑えることを目的にタイ政府も含めた官民一体の共同事業を立ち上げた。
花王は、独自の技術を応用した製品を開発しており、まずはタイ保健省にその製品と650万タイバーツを寄付するなどの取り組みを開始している。
その花王の製品は、「Biore GUARD Mos Block Serum(ビオレガード モスブロックセラム)」。
肌上に低粘度のシリコーンオイルを塗布することで、蚊が肌にとどまらず、吸血を阻害できることを発見した花王が、その技術を応用して開発したものだ。将来的にはタイでの市場販売も予定されているという。
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花王インダストリアルは、廃棄物処理システムの整備も進めることで、ボウフラの発生、つまり蚊の発生を減らす取り組みも展開するという。
他にも、花王は、タイ国立電子コンピュータ技術研究センター(NECTEC)が開発したモバイルアプリ「RooTan」へ協賛もしている。この「RooTan」は、デング熱に関する最新情報を発信するアプリ。
デング熱の発生とリスクに関する情報をリアルタイムで提供するほか、最新の健康関連情報も発信している。例えば、現在地や選択した地域におけるデング熱の感染リスク状況、PM2.5の濃度や暑さ指数など、さまざまな情報を得ることができるのだ。
また、タイのマヒドール大学と共同でフィールドワークなども実施していく予定だ。
いかがだっただろうか。蚊といえど、侮ることができない危険な生き物。世界でこの蚊によって落としている多くの命を救うことができる花王のプロジェクトに敬意を表したい。