生産される農作物の40%以上が、害虫、雑草などによって失われているという驚くべき事実がある。
しかも世界の人口が増加し続けており、その食糧を確保するためにも、害虫や雑草による農作物への被害を抑える必要があるのだ。
そうなると農薬を使うことが必要不可欠のように思われるのだが、そんな農薬に依存しない害虫防除、害虫被害ゼロ農業の実現に向けた取り組みが実施されている。
今回は、そんな話題について紹介したいと思う。
害虫被害ゼロ農業とは?
繰り返しになるが、生産される農作物の40%以上が、害虫、雑草などによって失われている。つまり、人類はいつも害虫や雑草などによって悩まされてきたのだ。
その解決策の1つとして使用されてきたのが農薬。しかし、農薬が害虫に効かなくなる、農薬を散布するのが農家にとって重労働になる、などの理由から曲がり角に来ているという。
その解決策の1つとして、政府が進める“ムーンショット型農林水産研究開発事業”として、「先端的な物理手法と未利用の生物機能を駆使した害虫被害ゼロ農業の実現」の研究開発プロジェクトが、京都大学の日本典秀 教授を主導に進められている。
青色レーザー光による殺虫技術、新たな天敵系統の育種、行動制御などが研究内容だ。今回は、特にこのレーザー光による殺虫技術についてフォーカスしたい。
レーザー光による殺虫技術とは?
このレーザー光による殺虫技術とは、飛んでいる害虫を検知、追尾して、レーザー光によって狙撃する技術。
農薬のように、害虫に効かなくなるなどの心配がない、環境への負荷も少ないといったことがメリットだ。
現在開発したシステムでは、害虫を検知してからレーザーで狙撃するまでの間には0.03秒程度のタイムラグが発生するという。そのたった0.03秒程度の間でも害虫は飛び続けるので、害虫をレーザー光で命中させることができないという課題があったというのだ。
しかし、この課題の解決策として、検知から0.03秒後の害虫の位置をリアルタイムで予測する技術を開発したという。そして、飛び続ける害虫の位置を昼夜問わずに予測可能だというから驚きだ。
いかがだっただろうか。2025年までに、リアルタイムで害虫の飛行を予測してレーザーを照射して駆除する技術の実用化を目指しているという。
そして、将来的には、車両やドローンなどにこのシステムを搭載できるよう、人的な労力ゼロでできる技術の開発を進めていくという。