佐賀大学の冨永昌人教授らの研究チームは、水田で“泥の電池”の実証試験を行うというプレスリリースを発表した。

泥と電池というのはどうも結び付かず、イメージがしにくいと思う。“泥の電池”とは、どのようなものなのか、どのようなことを目指しているのか、今回は、そんな話題について紹介したいと思う。

「泥の電池」とは?

少し前になるが、2020年9月28日に佐賀大学から「水田での“泥の電池”による発電を実現」というタイトルのプレスリリースが発表された※1

そして2021年7月30日には「水田での“泥の電池”による発電~昨年度に引き続き、実証試験を始めます~」というプレスリリースが同じく佐賀大学から発表された※2

“泥の電池”を開発した研究チームの佐賀大学 冨永昌人教授は、生物電気化学を専門にされている。

“泥の電池”以外にも、有機薄膜修飾による電極界面の機能化、炭素電極の酸化腐食反応、酵素触媒型燃料電池の開発、生体分子の電子移動反応制御と電子素子への応用などを研究されていて、過去には電気化学的制御によるHIV感染細胞の増殖抑制という研究もされていたという。

では、“泥の電池”とはどういったものだろうか。

それは、微生物燃料電池で、水田などの微生物の力を借りて発電するものだ。水田などの泥の中にいる微生物が有機物を分解するときに発する電子を利用して発電することができるという。

この微生物燃料電池の実現は、これまで難しいとされてきたが、佐賀大学冨永昌人教授、ニシム電子工業らの研究チームは見事に実現した。

  • 泥の電池の原理

    “泥の電池”の原理(出典:佐賀大学)

泥で発電できるということだけでも驚くのだが、実はこの泥による発電と同時に微生物の代謝が高まるため、泥中の環境も浄化されるというからすごい。

これまでは実験室レベルの研究だったというが、実際の水田での実証試験から発電できることを確認したとのことだ。干潟泥やインドネシアの火山性泥での発電を実証してきており、2021年の7月時点では畑での実証実験を準備中だとしていた。

  • 泥の電池

    水田の“泥の電池”(出典:佐賀大学)

いかがだっただろうか。地方で、電気が通っている水田などは多くないと感じる。

しかし、この“泥の電池”を使えば、電線などを敷設し送電しなくとも電気を得ることができるようになるだろう

。現在の電池の起電力やコストの詳細は不明だが、この“泥の電池”が実用化されれば、IoTセンサー、ドローンの充電など活用したスマート農業の導入の起爆剤の1つとして機能する、そんなことが期待できるだろう。水田の泥で発電でき、水田の環境を浄化できるこの技術に、魅力を感じるのはわたしだけだろうか。

参考文献

※1https://www.saga-u.ac.jp/koho/press/2020092820214
※2https://www.saga-u.ac.jp/koho/press/2021073022222