普通、空飛ぶタクシーやドローンなどはプロペラや有翼にて浮上、飛行するのが一般的であろう。しかし、ローターで浮上し、飛行することができる斬新な技術をもったベンチャーが存在する。

それはオーストリアのCycloTechだ。このローターで飛ぶとはどのようなことなのか、今回は、そんな話題について紹介したいと思う。

ローターで空を飛ぶCycloTechとは?

とても変わった空飛ぶタクシーを開発する企業がいる。CycloTechだ。ちなみに、筆者は、CycloTechのローターで空を飛ぶ機体をeVTOL(電動垂直離着陸機)に分類しているが、CycloTechや他のサイトではeVTOLとの表記があまり見られない。しかし、電気を動力としており、垂直浮上、着陸する機体であるので大きく間違っていないと考えているのでご了承いただきたい。

まず、CycloTechの機体を見てみよう。飛行体というよりは、F1などのレーシングカーをイメージさせるデザインになっている。おそらく多くの方もこれを飛行体とイメージするかたは少ないのではないだろうか。

それはなぜかというと、全体のフォルムがレーシングカーに類似しているという点もあるが、タイヤのようなものが4つ付いていることに起因しているからだろう。

  • CycloTechが開発したeVTOL

    CycloTechが開発したeVTOL(出典:CycloTech)

このタイヤのようなものが、ローター。このローターは、Wings、Hub、Conrodの3つから大きく構成されている。

回転するHubは、Conrodと呼ばれるロッドを通じてWings(翼)と繋がっていて、Hubが回転することで、ConrodもWingsも回転する。Hubが回転中にWingsの向きを変えることで、推力を発生させることができる。

また、驚くのは、推力の方向を360°自由に変えることができる点だ。これがすごい。つまり、上昇、下降もしかり、後方へ進むこともできるということになる。

実は、このローターは、Voithの「Voith SchneiderPropeller」という船などの動力源の設計に基づいて開発されたという。この飛行体の速度や飛行時間などは不明だ。

  • ローターの原理

    ローターの原理(出典:CycloTech)

■ローターの揚力や推進力の原理の動画(※外部サイトに遷移します)

CycloTech初飛行に成功

2021年10月10日、CycloTechは自社で開発したローターを有するeVTOLの初飛行に成功している。この初飛行は、屋内で行われていた。

動画には、バックグラウンド音楽も流れているので、ローターの回転による騒音がどれくらいのものなのか確認はできないが、数mほど離れたスタッフなどは、ヘッドホンなど耳を防護するプロテクターをつけていない様子をみると、想像以上に静かなのかもしれない。

そして、機体が安定した状態で高さ1~2mくらい浮上し、縦横無尽に動く性能の高さを公開している。飛行時間としては約1分のものだが、とても不思議な感覚になる動画だ。また、初飛行の様子の動画が公表されているので、ぜひご覧いただきたい。

CycloTechの初飛行の動画

いかがだっただろうか。CycloTechのローターの強みは、何といっても360°自由自在に推力を発生させることができる点。これにより、他の飛行体比べて正確な操縦性が可能となるという。

他にも強みがある。このローターは、垂直軸型の風力発電にも活用できるという点だ。つまりCycloTechは、再生可能エネルギー事業にも参入しているのだ。このCycloTechの開発したローターにとてつもない将来性を感じるのはわたしだけだろうか。