みなさんは、睡眠中に夢をみるだろうか。
私の周りには、睡眠中に夢をみる人と夢をみない人がいるようだ。実際には夢をみているのだが、記憶にないだけとも言われている。
夢の内容も人それぞれだろう。楽しい夢だったり、幸せな夢だったり、悲しい夢だったり、怖い夢だったり。みる夢を予想することもできない。みたい夢をみることもできない。
しかし、マサチューセッツ工科大学(MIT)内に設置されている革新的なデジタル技術などの研究所、MIT Media Labでは、見たい夢をみることができる、そんなテクノロジーを開発しているようだ。今回はそんな夢のような装置について紹介したいと思う。
興味がつきない“夢”とは?
人はどうして夢を見るのか。レム睡眠とかノンレム睡眠という言葉を聞いたことがある人も多いことだろう。睡眠はこの「レム睡眠」と「ノンレム睡眠」に分けられる。
レム睡眠とは眠りが浅く、ノンレム睡眠とは眠りが深い状態を表す。このレム睡眠とノンレム睡眠は、1サイクルの平均が約90分と交互に現れるという。
みなさんの睡眠時間が6~8時間とすると、4~5回のレム睡眠、ノンレム睡眠が現れていることになる。そして、みなさんが記憶している夢というのは、朝起きる直前の明け方ころの眠りが浅くなったレム睡眠の時に見た夢が多いと言われているのだ。
昔から、夢の分析としてフロイトなどが有名で、夢事典といった書籍もある。見た夢とその夢を見た理由や意味などが記されているものだが、夢のメカニズムは、まだまだ未解明なことが多く、多くの人にとって興味がつきない分野である事は確かなようだ。
見たい夢をみることができるプロトコル「TDI」とは?
MIT Media Labが開発した、見たい夢を見ることができるテクノロジーの名は「TDI」。Targeted Dream Incubationの略だ。
TDIとは、「Dormio」というデバイスとアプリを使って見たい夢を誘導することを実現。入眠時に夢に関する情報を繰り返し送信することで特定のテーマの夢を導くことができるという。
「Dormio」は、手首や指に装着するウェアラブルデバイス。心拍数や指の位置などをモニターすることで、睡眠のパターンを把握することができる。
そして、もう1つのアプリは、音声を録音したり再生したりできる装置。以下の画像の右にテーブルに置かれている装置で入眠時に夢に関する情報を繰り返し音声などで再生するのではないだろうか。
MIT Media Labによると、hypnagogia(ヒプナゴジア)という睡眠開始時に見られる意識が半分はっきりした状態のときに、みたい夢の特定の情報を眠る人に吹き込むことで、この情報を夢のコンテンツに直接組み込むことを可能にしたと説明している。
研究では、「木の夢」をみるように誘導することを実験した。「Dormio」で被験者の心拍数、皮膚表面の電気的な変化、そして指が曲がったり、リラックスしている状態を測定。
被験者が睡眠に入り、hypnagogiaの状態であることを確認し、被験者に対して「木のことを考えることを忘れないでください」や「あなたの考えを観察することを忘れないでください」などの音声をアプリに録音して再生したという。それによって、被験者の67%もの方が、木の夢を見たというのだ。
いかがだっただろうか。見たい夢をみることが可能になる、そんな装置が開発された。
“夢”が解明されてくると、なぜか寂しい気持ちもするが、夢をコントロールすることで、人の感情、創造性、記憶力などの研究が進むという、そして、睡眠の質を高めることや疲労回復、精神疾患などの治療などにも活用できるのではないだろうか。