2023年3月4日、東海大学学生ロケットプロジェクトは、北海道の大樹町において、ハイブリットロケットの打ち上げの実験に成功した。この東海大学が行った打ち上げ実験やプロジェクトの概要、そしてそのロケットの詳細などについて紹介したいと思う。
市販材料を用いた「ハイブリッドロケット57号機」
東海大学の学生たちが打ち上げたハイブリットロケットとは、どのようなものだろうか。以下の図をご覧いただきたい。その名も「ハイブリットロケット57号機」。全長2.045m、直径154mm、ドライ重量10.725kgのロケットだ。
燃料には固体のWax燃料(ロウ)、酸化剤には液化亜酸化窒素を使っているといい、ウェット重量では11kgになるようだ。機体素材は市販のGFRP(ガラス繊維強化プラスチック)チューブを主体とし、アルミニウム合金のリングでモジュール間を接合している。これにより、660Nの推力を実現しているとする。
5年ぶりの打ち上げ実験は予定通りに進み大成功!
東海大学の学生ロケットプロジェクトは、北海道の大樹町において行われてきている。実はこのプロジェクトは2004年から行われている。しかしコロナ禍の影響により中断を余儀なくされ、今回が5年ぶりの再開となったのだ。
今回のチャレンジでは、機体の強度を高めたことでロケットは無事に打ち上げに成功し、将来の宇宙空間到達と超音速飛行に向けた技術実証にも成功したとする。また参加した学生は、ロケットの打ち上げに向けて貴重な経験を積み重ね、そして今回、本番ともいえるハイブリットロケットの打ち上げ実験に成功したのだ。
ロケットは打ち上げ後も予定通りエンジンを燃焼し、9.32秒で高度416.45mまで到達。そしてパラシュートを開き、射点から北北東440mの地点に落下した後、ロケットの機体は回収されている。
学生ロケットプロジェクトに携わるSPACE COTANと大樹町とは
実は、この学生ロケットプロジェクトには、北海道の大樹町とSPACE COTANが深く関わっている。大樹町といえば"航空宇宙の町"としても知られ、ロケット開発企業のインターステラテクノロジズを連想する人も多いだろう。他にもJAXA(宇宙航空研究開発機構)、SkyDrive、電気通信大学、三菱重工、室蘭工業大学などが、気球や空飛ぶクルマ、ドローンなどを用いた実験を行っている。
一方のSPACE COTANは、大樹町からの委任に基づいて「北海道スペースポート(HOSPO)プロジェクト」の推進業務全般を担っている企業。HOSPOとは、2021年4月に大樹町で本格稼働した、アジア初の民間にひらかれた商業宇宙港で、大樹町とSPACE COTANは「北海道に、宇宙版シリコンバレーをつくる」というビジョンの実現に向けて、ロケットやスペースプレーンの発射場・実験場の整備や、打ち上げの支援業務を担っている。
彼らは、大学や民間企業、団体を積極的に受け入れ、航空宇宙実験の聖地として航空宇宙分野の研究開発や産業の発展に邁進している。世界の宇宙ビジネスを支える将来のインフラとして、研究開発やビジネスのサポート、地方創生を含むビジネス機会を提供しているのだ。
いかがだっただろうか。東海大学の学生ロケットプロジェクトのロケット打ち上げ成功においても、大樹町やSPACE COTANが大きく貢献していることがおわかりいただけたかと思う。他にもHOSPOプロジェクトでは、新たなロケット射点の整備や既存の1000m滑走路の延伸工事を実施している。未来の宇宙版シリコンバレーの完成がとても楽しみだ。