2023年3月6日、日本郵船とアストモスエネルギーは、液化天然ガス(LPG)を燃料とする船舶「LYCASTE PEACE」にて、バイオ燃料を使った実証試験が完了したと発表した。では、この実証実験とはどのようなものだろうか。そしてどのような意義があるのだろうか。今回は、こんな話題について紹介したいと思う。

  • 日本郵船は、バイオ燃料を用いた海運の実現を目指している。今回は、バイオ燃料サプライチェーン全体の実証を目指した取り組みについて見ていく

    日本郵船は、バイオ燃料を用いた海運の実現を目指している。今回は、バイオ燃料サプライチェーン全体の実証を目指した取り組みについて見ていく

船舶用バイオ燃料サプライチェーンの安全性を証明する実証実験

日本郵船とアストモスエネルギーは、LPGを燃料とする船舶にて、バイオ燃料を使った試験航行が完了したと発表した。この実証実験は、シンガポールのNPO法人「Global Centre for Maritime Decarbonisation(GCMD)」が主導する、船舶用バイオ燃料のサプライチェーン確立に向けたプロジェクトの一環として行われたものだ。

では、この実証実験はなぜ行われたのだろうか。それは、海運業界のさらなる脱炭素化を目指すためだ。さらには、内航海運における代替燃料の活用に向けた取り組みでもある。その代替燃料として期待されているのが、バイオ燃料なのだ。

バイオ燃料の利点は、既存の船舶のエンジン機構やインフラをそのまま活用することができることだ。また、バイオ燃料を燃焼したときにCO2は発生してしまうのだが、植物や廃食油が原料であるためカーボンニュートラルにつながっており、脱炭素化に向けた次世代の有力な燃料の1つとされているのだ。

ただし、バイオ燃料はまだ本格的に実用化されていないという現状がある。その背景には、通常燃料とバイオ燃料を混合した場合のデータ、そしてその混合比率などの検証もまだ十分とはいえないことがある。また、バイオ燃料自体の輸送工程におけるサプライチェーンの透明性にもおいても、未だ課題があるのだという。

こうした中、バイオ燃料の実用化に向けては、さまざまな企業がバイオ燃料を使った船舶運航の実証実験を行っている。例えば、商船三井グループや丸紅などだ。これらの企業も、海外の海運企業と協力しながら、バイオ燃料の燃焼性や安定性、部品の劣化などのデータを取得し評価しているのだ。

今回、日本郵船とアストモスエネルギーが行ったLPG船での実証においても、同様のデータを取得していると推測される。そしてこれらのデータをGCMDへ提供しフィードバックを得ることで、今後のバイオ燃料の航行に活かしていくとする。

  • 日本郵船がバイオ燃料の実証実験を行ったLPG船「LYCASTE PEACE」

    日本郵船がバイオ燃料の実証実験を行ったLPG船「LYCASTE PEACE」(出典:日本郵船)

なお、今回のこの実証実験は、サプライチェーン全体を含む実証となっている。そのため、バイオ燃料の生産地から補油地であるシンガポールまでの輸送、通常燃料との混合、混合燃料の管理を追跡することで、バイオ燃料のサプライチェーンが追跡可能かつ安全であることを証明したとする。

いかがだったろうか。今回の実証実験で使用されたバイオ燃料は、「FAME B24」。FAMEとは脂肪酸メチルエステルのことで、Bに続く数字はその含有量を示す。今回の場合は、使用済み食用油由来のFAMEが24%含まれた燃料だったということだ。

海運業界においても、このような脱炭素化の動きが活発化している。今後の展開にも注目したい。