2023年2月21日、豪・クイーンズランド大学の理学部に所属する学生のTiarna McElligott氏は、消防士が消防活動中に命を落とす要因に注目し、消防士の命を救う可能性を高めるマスクを開発しているという。では、このマスクとはどのようなものだろうか。今回は、こんな話題について紹介したいと思う。
消防士の命を守るマスクを開発する1人の学生
Tiarna McElligott氏は、クイーンズランド大学の「ilab Acceleratorプログラム」に最年少で参加している1人だ。彼女は、消防士が消防活動中に命を落とす要因に注目し、消防士の命を守る可能性を高めるマスクを開発しているという。
消防士が命を落とす1番の要因は何なのか、皆さんはご存じだろうか。多くの人は、火災によって崩壊してた建物の下敷きになったり、炎によって身体にダメージを受けてしまったりするケースだと考えるだろう。
だが、2020年の米国のケースでは、"過度な努力や行動"が死の要因となっているケースが、実に54%をも占めているというから驚きだ。過度な努力や行動と訳したが、英語では"Overexertion"と表現されている。ではこの単語が意味するのは、どのようなことだろうか?
消防士は、消火活動や救出活動という危険な環境下で任務についているとき、その活動に没頭しすぎて、過度な危険を正確に認識できないケースが多いという。そして気付いた時には、自らの身を守ることができなくなっているのである。
そこでMcElligott氏は、消防士が消火活動中に使用するコンパクトなヘルメットに、とある改良を施すことにしたという。どのような改良かというと、心拍数・血中酸素濃度・体温をモニタリングする仕組みを追加したのだ。
以下の画像にあるのは、このマスクのプロトタイプだ。マスクには電子センサ・処理ユニット・無線送信機が搭載されていて、これらの機器でデータを取得することによって、消火活動中の消防士が任務に没頭しすぎて過度な危険に陥る前に、消防士自身へと警告を出すというのだ。
またMcElligott氏は重要なポイントとして、消防士がこのマスクを装着することで、消防活動に新たなプロセスが追加されることがないように配慮しながら、さらなる開発を進めているという。
いかがだっただろうか。消防士の命を救う可能性を高めるこのマスクは、技術として斬新なものは使われていない。しかし、消防活動に隠れていた課題をしっかりと可視化し、それに対して低コストで効果的な施策を打っている点に、とても感銘する。