みなさんの食卓、そして外食先には、鮮度の良い美味しい魚が並んでることだろう。これは、水揚げされた魚が遠方であっても、冷凍技術などのおかげで鮮度を保って運ぶことができるからだ。
その冷凍技術のなかでも水と塩、たったこれだけを使って鮮魚を超急速冷凍できる技術がある。それが、「HybridICE」だ。
ホームページには、HybridICEで精製した凍結高濃度塩水に鮮魚を浸して冷凍する様子を見ることができる。今回は、このHybridICEについて紹介したいと思う。
次世代の冷凍機HybridICEとは?
水揚げされた魚を冷凍する技術というものは、さまざまなものがあるようだが、一般的には、エアブラスト方式とアルコールブライン方式が挙げられるだろう。
エアブラスト方式とは、冷たい空気を冷凍庫内に送風し、食品を凍らせる方式で、みなさんがイメージしやすいものはこれだろう。アルコールブライン方式は、アルコールブライン液という低温の不凍液に食品を浸して凍らせる方式だ。
HybridICEでは、これら2つの方式に比べて熱伝導率が100倍以上高いという。
では、なぜHybridICEは、高濃度食塩水を製氷できたのだろうか。詳細は企業秘密だろうが、高濃度食塩水を瞬間凍結する技術の開発に成功。精製する塩水の塩分濃度を細かく調整することで、-1℃から-21.3℃までの温度を持った製氷を選択的に製造することができるという。しかも製氷の形状も自由に選ぶことができるという。
HybridICEのメリットとは?
HybridICEのメリットは何だろうか?
もちろん、水と塩だけを使っているので、低コストであることがまず挙げられるだろう。そして、高濃度塩水の製氷にただ魚を浸すだけというとても簡単で単純なオペレーションだ。また、HybridICEによる急速冷凍は、魚の細胞1つ1つを生のときの原型に近い形を保つことができるという。
加えて、原料は水と塩だけなのでHybridICEに浸した魚は、人に害もない。また、例えば-1℃の温度として活用すれば保冷剤として活用でき、菌などの増殖も防げる。
冷凍を保つために電気も必要ないため、エコだ。従来の冷蔵庫や発電機といった設備なく長時間温度を保つことができるので世界各地へと流通圏を拡大できる点もメリットだ。
従来からスラリーアイスと言われる海水や塩水を冷却したシャーベット状の氷を使った鮮魚の冷凍技術というものはある。
HybridICEは、従来のスラリーアイスに比べると、-21.3℃というさらに低温を実現しており、鮮魚を瞬間的に冷凍する“活け締め”ができたり、解凍後のドリップが少なく高品質な冷凍品を提供できるという。
いかがだっただろうか。正直、水と塩で低温の製氷が作れ、鮮魚の冷凍に活用できるということで、とても理解しやすい。
もちろん、この高濃度塩水の瞬間凍結技術には技術、ノウハウなど詰まっていて難解なものもたくさんあるだろうが、筆者が紹介するテクノロジーに比べるととても理解しやすい。このようにシンプルだが、次世代に活躍するであろうテクノロジーにとても魅力を感じる。