Molymemは、革新的な水のろ過ソリューションを開発するスタートアップ企業だ。では、彼らが開発する革新的な水のろ過ソリューションとはどのようなものだろうか。今回は、こんな話題について紹介したいと思う。
Molymemが開発した水のろ過ソリューションとは?
Molymemは、マンチェスター大学のRobert Dryfe教授、Mark Bissett博士らの研究室からスピンアウトして生まれた、革新的な水のろ過ソリューションの開発を目指すスタートアップだ。
彼らが開発するろ過技術の何が革新的かというと、これまでのろ過技術よりも環境に優しく、コストも抑えられることだという。では、このろ過ソリューションを詳しく見ていこう。
従来の水のろ過に、膜技術を使った手法がある。この方法は、化学添加物を必要とせず構造も単純であることから、ろ過以外の消毒や蒸留という精製技術にも好まれている。ろ過膜には、ポリスルホンやポリアミドなどの高分子が多く使われているが、これらは高温下で使うことはできず、酸やアルカリなどにも耐性がないなどの欠点がある。その他にも候補となる素材はあるが、セラミック膜などは高価であり、ゼオライト膜は水分フラックスが低いという課題がある。また酸化グラフェンという選択肢もある。しかし酸化グラフェンは、水によって膨張する性質があり、また海水のイオン除去率が低いことも課題だという。また最近では、遷移金属のジカルコゲニドなどの材料が水のろ過に適しているということが示唆されているが、これらはまだ研究報告がほとんどない。
そこでMolymemは、水ろ過ソリューションにMoS2(二硫化モリブデン)を使う。以下の図をご覧いただきたい。水は上から下に向かって浸透していく。そして、図中の濃い茶色で示されたものがMoS2だ。これが層状の構造になっていて、水に含まれるNa(ナトリウム)やCl(塩素)がうまく除去されていくイメージがお分かりいただけるだろうか。ちなみにDyesとあるのは、このMoS2を使ったろ過膜の透水率を測定するために使われた色素を指す。
このMoS2を使うことで、酸化グラフェンのように水による膨張もなく、イオン除去率が減少することもないという。また、アルカリ性・酸性などpHが変化しても耐性があること、6ヶ月を超える耐久性があること、そして流量も大きいことが確認されている。つまり、これまでの水ろ過膜技術の課題を払拭するかのような研究結果が示されているのだ。
いかがだったろうか。このMolymemが開発したMoS2ベースの水ろ過ソリューションは、上述したメリットを活かせばさまざまな産業に適用できるだろう。排水処理、医薬品開発、食品、食料の製造など、多様な活用が期待される素晴らしいテクノロジーなのだ。