2023年1月6日、スイス連邦工科大学ローザンヌ校(EPFL)とスコットランドのヘリオット・ワット大学(Heriot-Watt University)は、AIを活用してアミンの排出量を予測し、放出のパターン化やモデル化にも成功したと発表した。では、なぜアミンの排出量を予測することが重要なのだろうか。今回は、こんな話題について紹介したいと思う。
アミンの排出量を機械学習で予測
昨今、温室効果ガスであるCO2を分離・吸収する技術が注目されている。その技術の1つがDAC(Direct Air Capture)だ。この技術は、空気中から直接CO2を分離・吸収することができるもの。そしてこのDAC技術の多くには、アミン溶液が活用されている。また、天然ガスの処理や精製の過程などにおいて排出されるCO2の除去や吸収にも、アミンは利用されている。その他にも、特定の医薬品やエポキシ樹脂や染料など、さまざまなところにアミンは使われているのだ。
しかし、アミンには上記のようなメリット以外の側面もある。実はアミン自体は、健康に害を及ぼすだけでなく環境にも有害であるという。
現在では、温室効果ガスであるCO2の分離回収など、アミンのメリットだけがフォーカスされていて、デメリットに関する議論があまりなされていないという実情があるという。そこでEPFLなどの研究チームは、アミン排出量の正確な監視と予測が重要であると考えた。しかし、その監視や予測はそう簡単ではないとのこと炭素を回収するプラントは複雑なシステムで、個々のプラントで大きく構造などが異なっているため、把握が難しいのだ。研究チームは、実際の工場で5分おきにデータを取得するなどの方法を試みたが、複雑な化学反応やプラントオペレータのオペレーションに起因する影響などが含まれ、データの正確な解釈は難しかったというのだ。
そこで彼らは、潜在的に有害な炭素回収プラントからのアミンの排出を正確に予測するため、機械学習を用いたアプローチ方法を開発。この方法であれば、アミン放出のパターン化やモデル化にも成功し、あらゆるシナリオに対応できるものだという。
ちなみにこの研究成果は、2023年1月4日の『Science Advances』に掲載されている。
いかがだったろうか。CO2の分離・回収に役立つアミン溶液のメリットばかりが注目される中、アミン溶液のデメリットにも目を向け、その対応手段を研究開発する発想に魅力を感じる。もしかしたら目立たない研究成果かもしれないが、このような研究成果こそもっと注目されてほしいと感じる。