2023年1月11日、カリフォルニア工科大学は、未解明だった地球内部にある下部マントルの対流発生メカニズムを解明したというプレスリリースを発表した。では、そのメカニズムとはどのようなものだろうか。今回は、こんな話題について紹介したいと思う。
地球の下部マントルの対流の発生メカニズムとは?
ご存知の通り、地球内部にはマントルがあり、それらは上部マントルと下部マントルに大別される。そのうちの下部マントルはより固い岩石で構成されており、何億年という月日をかけてゆっくりとキャラメルのように対流しているという。そしてこの対流によって、地球の内部全体へと熱を輸送しているのだ。
しかし、この対流が発生するメカニズムについて、その詳細は解明されていない。実験室での模擬実験を行おうとしても、最大で圧力が135GPa、温度が華氏数千度という実際の環境を再現できないのが、その理由の1つだ。
下部マントルは固い岩石と先述したが、主にbridgmanite(ブリッジマナイト)という鉱物でできており、その他にも鉱物を含んでおり、periclase(ペリクレース)と呼ばれる物質も含んでいる。このペリクレースは、ブリッジマナイトよりも弱くて簡単に変形することが過去の実験で示されていたが、数億年というタイムスケールを考慮したときにどのように振る舞うのかが不明だったとのことだ。
そこでカリフォルニア工科大学は今回、この数億年というタイムスケールを考慮した複雑な計算モデルを構築したところ、これまでブリッジマナイトよりも弱く簡単に変形すると考えられていたペリクレースが、実は、ブリッジマナイトよりも強い性質を持つことが分かったという。
彼らは、下部マントルの対流の発生メカニズムについて、ピーナッツバターで例えている。従来は、ペリクレースがピーナッツバターにおける「油」のように潤滑油的な役割を果たすものと考えられてきたが、実は、「ナッツ」の役割の方が近いとする。ペリクレースは対流の流れに従って、粘性に影響することなく進むことができるが、圧力がかかった状況では、このペリクレースの動きは遅くなるという。そして下部マントルの変形は、主にブリッジマナイトが制御に寄与しているという。
ちなみに、この研究成果は、2023年1月11日に Nature誌に掲載されている。
いかがだっただろうか。この研究成果は、地球だけでなく、他の惑星の理解を深めるにも役立つという。我々が容易に届くことができない領域への解明は、これからももっと進んでいくことだろう。