近年、ロボットの実装事業が日本において盛んだ。経済産業省は、その一環として例えば、「ロボット実装モデル構築推進タスクフォース」を開始している。
その中で、ロボットを使った店舗の省力化や新しい店舗のオペレーション基盤の構築に向け、2021年10月にファミリーマートに遠隔操作ロボットを導入する計画がある。
それを担うのは、Telexistenceというベンチャー企業だ。
このTelexistenceとはどんな企業なのか、コンビニに導入される遠隔操作ロボットとはどのようなものなのか、今日は、そんな内容を紹介したいと思う。
人間の存在を拡張するTelexistenceとは?
Telexistenceとは、2017年に設立されたベンチャー企業。あらゆる領域において活用できる、ロボットの設計・製造・オペレーションを事業としている。
この企業の名称であるTelexistenceは、東京大学名誉教授、そしてTelexistenceの会長である舘暲 博士が提唱した「テレイグジスタンス」に由来する。
テレイグジスタンスとは「人間が、自分自身が現存する場所とは異なった場所に実質的に存在し、その場所で自在に行動するという人間の存在拡張の概念であり、また、それを可能とするための技術体系」のこと。 そんなTelexistenceは、2020年7月に遠隔操作ロボット「Model-T」を発表した。
Model-Tは、小売り店舗の作業を担うことができる。そして、次のような特徴がある。
比較的小型であり導入にあたり店舗の環境を変えることは最小限に抑えられること。狭い小売店舗空間内で商品陳列作業を行えること。ロボットの胴体やアームに22自由度の関節を実装していて、人間のような動作を行えること。真空吸引と2指グリッパーの組み合わせを1つのロボットハンドで実現していること。ロボットと操縦者間の映像伝送において、視覚と身体感覚との操作のずれをほぼ感じることがなくストレスなく作業を行える超低遅延なデータ伝送技術を有していること。
ほかにも操縦者がVR酔いしないよう快適性の高いUIとなっていること。低コストで大量生産が可能な設計、そしてロバスト性を持った設計となっていることなどがあるようだ。また、とてもデザイン性が高いのも特徴だ。
遠隔操作ロボットのコンビニでの作業はとてもスムーズ!
Telexistenceは、試験運用という位置付けのようだが、すでに実際のコンビニエンスストアでModel-Tを使って商品陳列作業を行っている。その様子の動画があるのでぜひご覧いただきたい。
Model-Tの動きが滑らかで、人のような動きをしていることにとても驚く。形状や重量の異なる商品も問題なくつかみ、持ち上げることができているのだ。
ペットボトルを持ち上げたり、お弁当の真空吸引のシーンも確認できる。ちなみに陳列可能な商品は200種類にも及ぶとのこと。
そして、操縦者とロボットの動きにもズレはまったく感じられない。つまり通信技術も問題ない印象だ。
Telexistenceは、コンビニの商品陳列作業だけにフォーカスしているわけではない。ほかにもロジスティクス分野での活用を模索しているようだ。そのなかでも、多くの種類、形状のある荷物のピッキング、仕分け作業、そして出荷時の仕分け作業がある物流倉庫での作業が活躍できそうだ
いかがだっただろうか。Telexistenceがすでに実用化に向けて動き出している、遠隔操作ロボットModel-Tについて紹介した。
コンビニの商品陳列作業を紹介したが、日本ではムーンショットという2050年の未来に向けて取り組む事業がある。 科学技術振興機構(JST)が主導する、ムーンショット目標1のサイバネティックアバターには、このTelexistenceの技術が活躍できるさまざまな未来が描かれている。Telexistenceには、この夢のような世界の実現に向けてぜひ尽力していただきたい。