京都大学で昆虫の研究を行う大学院生の丸岡毅氏は、ユニークなお茶の研究をしている。それは、"虫の糞から淹れたお茶"。その名も「虫秘茶(ちゅうひちゃ)」だ。では、このお茶はどういったものだろうか。そして、どのような魅力があるのだろうか。今回は、こんな話題について紹介したいと思う。

虫の糞からお茶を淹れた、そのきっかけとは?

京大大学院 農学研究科の丸岡毅氏は、「科学生態学研究室」に在籍し、昆虫と植物の関係性に関する研究を行ってきたという。そんな彼が着想したことから開発されたのが、虫の糞から淹れたお茶の虫秘茶だ。このお茶については現在、特許の出願やクラウドファンディングでの販売などが行われている。

  • 京大大学院で昆虫について研究する丸岡毅氏が開発した「虫秘茶」とはいったいどのようなものなのだろうか

    京大大学院で昆虫について研究する丸岡毅氏が開発した「虫秘茶」とはいったいどのようなものなのだろうか(出典:虫秘茶公式HP)

とてもインパクトの強いお茶だが、丸岡氏はなぜ、虫の糞から淹れたお茶に気がついたのだろうか。彼は、研究室の先輩がとってきたマイマイガを育てることになり、桜の葉を餌としてあたえていたところ、その糞からとても良い香りがすることに気がついたという。そしてすぐに給湯室に向かってお湯を注いだところ、桜のいい香りがしておいしかったというのだ。そこから彼は、お茶として活用できると直感したのだという。

丸岡氏の好奇心はこれだけにとどまらない。その後は桜の葉以外にも、リンゴの葉やどんぐりの葉をマイマイガに餌として与え、その糞を集めてお茶を淹れてみたとのこと。するとやはり、香りもよくおいしく味わえたという。ちなみに彼は、そのようなエピソードを自身のnoteでも語っている。

虫秘茶は紅茶と同じプロセスで生産されている?

では、虫の糞から淹れるこの虫秘茶について詳しく見ていこう。同製品は、植物を食べた虫の糞から淹れたお茶。つまり、植物の葉が虫の体内で消化されて出てきたものだ。そして実は、消化というのは発酵とほぼ同じ仕組み。この発酵というプロセスは一般的な中国茶や紅茶と同じ原理であり、美味しいお茶の生産に用いられる工程だ。また、虫と餌にする植物の葉の種類は組み合わせが無限大なため、糞から生み出されるお茶の香りや味も同じく無限大とのことだ。

  • 「虫秘茶」のイメージ画像。シャーレに入っているのがお茶の原料となる虫の糞だ

    「虫秘茶」のイメージ画像。シャーレに入っているのがお茶の原料となる虫の糞だ(出典:虫秘茶公式HP)

虫秘茶の生産から地方創生へ

丸岡氏によると、この虫秘茶は販売だけを考えて開発・生産されているわけではなく、お茶のサプライチェーン、さらにはもう少し広義に捉えて生態系まで踏み込んだ発想をしている。地球上には約27万種類の植物が存在し、虫は蛾だけでも約16万種類がいるが、これらはまだ未開拓・未利用の資源だ。彼はこれらをうまく利用することで、お茶の多様性を広げられるとする。そして、虫や植物には「地域性」があるという。つまり、地方創生といった観点でもメリットがあるのだ。そしてさらに噛み砕いて言えば、虫秘茶の先には新産業の創出が見えているのだ。丸岡氏の知的さや発想力には驚かされる。

  • 丸岡氏らが構想する「虫秘茶」のサプライチェーン

    丸岡氏らが構想する「虫秘茶」のサプライチェーン(出典:虫秘茶公式HP)

いかがだったろうか。虫の糞のお茶というユニークさとインパクトの強さにとても心惹かれるのだが、それに加えて、サプライチェーン全体の最適化や生態系のサステナビリティまで考えている構想にも驚く。ぜひクラウドファンディングサイトから虫秘茶を購入してみてはいかがだろうか。