2022年12月20日、コーセーは、日本人女性の顔の皮膚のマイクロバイオームと加齢の関係についての研究成果を公開し、国際学術誌「International Journal of Cosmetic Science (IJCS)」でも発表した。では、コーセーが解明した皮膚マイクロバイオームと加齢の関係とはどのようなものだろうか。今回は、こんな話題について紹介したいと思う。

皮膚マイクロバイオームと加齢の関係とは?

「マイクロバイオーム」というものをご存知だろうか。最近、腸内環境などに気を使う人が増えていると思うが、そこでもつまりマイクロバイオーム(細菌叢)という言葉が使われている。よく聞かれるのは、腸内細菌叢や腸内フローラという言葉だ。今回のコーセーが分析を行ったのは、皮膚マイクロバイオームと呼ばれる、顔の皮膚上に存在する複数の常在菌のフローラを指している。

では、なぜコーセーはこの研究を手掛けたのだろうか。近年、肌の常在菌と肌の状態の関係に関する研究が盛んに行われており、化粧品開発には欠かせないものとなっている。しかし、この肌の常在菌と肌の状態の関係は複雑であり、まだ解明されていないことも多いという。

そこでコーセーでは、21~80歳の健康な日本人女性234人の肌のマイクロバイオームを採取し、肌状態19項目を計測したという。その計測結果が以下の図だ。これによると、皮膚マイクロバイオームの多様性が高いグループは、油分が少ない・毛穴が少ない・肌のキメが良い・ポルフィリンが少ないなどの結果が得られたのだ。

  • 日本人女性の皮膚マイクロバイオームと肌状態の関係

    日本人女性の皮膚マイクロバイオームと肌状態の関係(出典:コーセー)

今回の研究成果の特徴としては、日本人女性234人という大規模な調査を実施したことや、検出された菌単独の分析ではなく菌の中で存在比が多い上位10種類の菌について網羅的に分析したこと、そして皮膚マイクロバイオームと肌状態の関係についての具体的な特徴まで把握できたことが挙げられる。

また同社は、年齢と肌の状態の相関関係についても調査を実施。その結果が以下のグラフだ。まず左側の図について、皮膚マイクロバイオームの多様性が高いグループは、年齢が高くなるにつれて、肌の明るさが減容していることがわかる。そして、皮膚マイクロバイオームの多様性が低いグループを対象にした右側の図は、年齢と肌の明るさにおける相関関係が薄いことがわかる。この結果についてコーセーは、「マイクロバイオームの多様性が高いグループは肌の明るさが加齢とともに低下しやすい可能性がある」と結論づけている。

  • 日本人女性の加齢と肌の明るさの相関関係

    日本人女性の加齢と肌の明るさの相関関係(出典:コーセー)

ちなみに、この研究成果の一部は、フランス化粧品協会が発行する化粧品や肌に関する国際学術誌のIJCSに掲載され、2021年に同誌に掲載された77論文の中で最も優れた論文として、「ベストペーパー賞」を受賞している。

いかがだっただろうか。皮膚マイクロバイオームと加齢の関係について網羅的に調査した素晴らしい研究成果だ。多くの女性が興味を持つ内容だったことだろう。そして次に期待するのは、皮膚マイクロバイオームの多様性が得られる化粧品や美容施術ではないだろうか。近年ではメンズ美容もブームになってきているので、日本人男性の皮膚マイクロバイオームと加齢の関係の研究についても進んでいくことを期待したい。