2022年11月24日、ライス大学らは、Cu(銅)-Fe(鉄)プラズモニック光触媒を使って、低コストでアンモニアから水素を作る技術を開発したという研究成果を発表した。では、これはどのような方法なのだろうか。そして、どのようなメリットがあるのだろうか。今回は、そんな話題について紹介したいと思う。
Cu-Feプラズモニック光触媒反応によるアンモニアからの水素生成とは?
2022年11月24日、Cu-Feプラズモニック光触媒を使って、低コストで水素を作る技術の開発が発表された。発表したのは、ライス大学のLaboratory for NanophotonicsとSyzygy Plasmonics、そしてプリンストン大学のAndlinger Center for Energy and the Environmentらによる研究チームだ。彼らは、アンモニアから水素を低コストで作る技術を開発したというが、いったいどのような方法だろうか。
研究チームは、地球に豊富に存在する遷移金属であるFe(鉄)とCu(銅)を触媒に選択した。まず、LEDから照射される波長470nmの光によって、Cu原子が「ホットキャリア」という高エネルギーの電子を生成する。このホットキャリアが、Fe原子に結合しているアンモニアの分解を進めることで、水素を得ることができるという仕組みだ。この仕組みをプラズモニック光触媒反応と呼ぶ。
以下の図をご覧いただきたい。これは、アンモニアから水素を発生させるためにCu-Feプラズモニック光触媒反応をテストしている様子だ。LEDからの光の色は、とても綺麗な青色になっている。
また、反応セルの詳細は以下の図のようになっている。20cmはないくらいの長さの円柱型の反応セルに、LEDや冷却装置が取り付けられた構造になっている。とても小さな構造体だ。
では、プラズモニック光触媒のメリットはなんだろうか。まず、大規模なプラントではなく、ローカルで生産できる点が挙げられる。彼らは次のようにも述べている。
"This is the first report in the scientific literature to show that photocatalysis with LEDs can produce gram-scale quantities of hydrogen gas from ammonia.(LEDを用いた光触媒により、アンモニアからグラム単位の水素ガスが生成できることを示した学術的な報告は、今回が初めてだ。)"
その他のメリットとして、プラズモニック光触媒を利用することにより、地球上に豊富に存在する銅や鉄といった遷移金属を使って、LEDという簡単な環境下で実施できる点が挙げられるという。
今回紹介した研究成果は、2022年11月24日にScienceに掲載されている。また、この研究成果に関する動画も公開されているので、ぜひご覧いただきたい。
いかがだっただろうか。この研究成果のすごいところは、プラズモニック光触媒作用において貴金属を遷移金属へ完全に置き換える道が開かれたという点だと感じる。とても意義のある素晴らしい研究成果だ。