2022年12月20日、トランスコスモスと応用技術は、VR技術を活用した遠隔デザインレビューシステムを試行したと発表した。では、彼らが実施したデザインレビューシステムとはどのようなものだろうか。また、どのようなメリットをもたらすのだろうか。今回は、こんな話題について紹介したいと思う。
遠隔バーチャルデザインレビューとは?
トランスコスモスと応用技術は、共同で「toDMG」というサービスを提供している。toDMGとは、彼らの言葉を借りると「顧客の課題解決のために、BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)によるリソースの最適化と、ジェネレーティブデザインをはじめとする最新技術を融合させたサービス」とある。 従来の設計手法は、要件定義・デザインの決定・3D CAD化・加工法の選定などを、すべて人が手作業で実施していた。しかし、保持部分・荷重・材料・加工方法の設計で必要となる条件を設定するだけでも大きな業務負担となっており、コンピュータが最適な設計案を複数提案してくれるジェネレーティブデザインを導入することで、顧客とBPO企業との間のさまざまなイテレーションプロセス(調整事項の繰り返し)を削減したり、もちろんコスト面の低下や品質の向上ももたらしたりしてくれるのだ。
今回の試行では、イメイドとものづくりネットワーク沖縄の2者による、電動ゴーカートのフロントバンパーブラケットの造形において、遠隔バーチャルデザインレビューを試行した。これは、toDMGプラットフォームのAdditive Manufacturing(AM)を活用したプロジェクトで、部品の3Dモデルをレビューするタイミングで実施されたという。
遠隔デザインレビューは、沖縄からアクセスするものづくりネットワーク沖縄、東京のトランスコスモス、そして大阪の応用技術がネットワーク上でつながる形で行われた。参加者はVRゴーグルを装着し、独自に開発したVR空間に同時にアクセスする。そして、フロントバンパーブラケットの造形前の3Dモデルをレビューしたという。
今回の遠隔バーチャルデザインレビューでは、複数の拠点から遠隔で同時に接続しても、通信に遅延がなく円滑なコミュニケーションが可能だった上、データ容量の重い3D設計データも問題なくスムーズに表示できたとのこと。つまり、バーチャルデザインレビューは、リアルな場でのデザインレビューとほぼ近い感覚で実施できるということを確認したのだ。
いかがだっただろうか。このニュースを見ると、未来の設計は、ジェネレーティブデザインを駆使しバーチャル空間を最大限活用した、効率的で効果的なものになるのだろうと感じる。従来の設計方法では、顧客と企業側のイテレーションによって多大な労力と時間が割かれることを、エンジニアたちは身に沁みて感じている。このシステムは、その課題を解決へと導く素晴らしい取り組みだ。