2022年12月21日、東海大学と富士通らの研究グループは、超音波AI技術を活用して、非破壊で冷凍マグロの鮮度を評価する技術を開発したと発表した。では、この世界初の技術とはどのような仕組みなのだろうか。そして、どのようなメリットがあるのだろうか。今回は、こんな話題について紹介したいと思う。
超音波AI技術を活用した冷凍マグロの非破壊鮮度評価技術とは?
我々が日々食しているマグロは、漁港や市場で熟練者がマグロの尾の断面を見て、鮮度やマグロの価格を決定している。ただしこの方法は欠点として、マグロを破壊している(尾を切っている)こと・熟練者に依存していること・検査の場所やタイミングが限られることなどが挙げられる。一方で、マグロを切らない非破壊な方法として、超音波を使う方法がある。しかし、冷凍マグロの体内では超音波が減衰してしまい、正確な検査ができないという課題があったとのことだ。
そこで東海大学と富士通は、冷凍マグロ内において減衰しない超音波の周波数帯を発見。500kHz程度あたりに最適な周波数帯があったという。そして、マグロ体内で鮮度不良があった場合には、超音波の反射波が特徴的になることを掴んだのだ。それが以下のグラフである。鮮度不良があった場合に反射が大きいことがわかるだろう。
しかし次のグラフのように、鮮度不良があった場合でも反射がそれほど大きくなく、顕著でない場合もある。そこで研究グループは、AI技術を活用。鮮度がよいマグロと鮮度不良のマグロ計10検体から取得した222個の超音波波形をAIに機械学習させ、高い確率で鮮度不良のマグロを特定できるようになったのだ。
ちなみにこの研究成果は、2022年12月22日・23日の超音波研究会で発表された。
いかがだっただろうか。富士通は、開発したこの超音波AI技術を活用した利用シーンのイメージも掲載している。ハンディターミナルタイプの機器で、冷凍マグロに直接かざすことで鮮度を確認でき、購入シーンやベルトコンベア上で鮮度の自動一括検査が可能になるイメージだ。また冷凍マグロだけでなく、牛・豚・鶏などの畜産やバイオ・医療領域など冷凍が数多く登場するシーンでも、この技術は大いに活用されるに違いない。