2022年12月3日、別府市・九州大学(九大)都市研究センター・別府市旅館ホテル組合連合会は、温泉の入浴によって「疾病リスク」と「腸内細菌叢」に変化が生じることを実証実験によって証明したと発表した。では、この実証実験の結果とはどのようなものだったのだろうか。今回は、こんな話題について紹介したいと思う。
温泉への入浴は本当に体にいいのか、その効果を検証!
温泉といえば、日本人にとって憩いの場所の1つで、旅行の目的地としても高い人気を誇る。そんな温泉だが、その泉質別にさまざまな健康効果があるとされ、また「毎日入浴することで、心筋梗塞に代表される虚血性心疾患や脳卒中の発症数が減る」、「温泉入浴により発症予防効果が促進される」などの仮説が立てられている。
ただしこれらはあくまで仮説であって、医学的・科学的な健康効果はまだ未解明の部分が多くあったという。そこで別府市などは、未解明な部分を少しでも検証したい、という想いを契機としてこの実証実験を開始したとのことだ。
では彼らは、実際にどのような実証実験を行ったのか。今回の実証実験では、140人にも及ぶ男女の参加者を性別・年代別に分類し、泉質の異なる温泉に一週間入浴してもらったという。そして、入浴の前後に参加者の腸内細菌叢をゲノム解析し、その結果から温泉入浴の健康効果を科学的に検証するというのだ。ちなみに被験者が入浴する温泉は、塩化物泉・単純温泉・炭酸水素塩泉・硫黄泉・硫酸塩泉の5種類の泉質に分けられた。
その結果は、以下の表をご覧いただきたい。泉質別・男女別でリスクが下がった疾病を示している。主な実験結果としては、単純温泉に男性が入浴すると「過敏性腸症候群」の疾病リスクが有意に減少することがわかったという。また、50歳未満の男性は5つの泉質の温泉のどれかに入浴することで「通風」の疾病リスクが有意に減少することも判明したというのだ。
また、参加者の腸内細菌叢については、男性が炭酸水素塩泉に入浴することでビフィズス菌の占有率が増加し、女性が単純温泉に入浴することでコプロコッカスの占有率が増加することわかったという。また、50歳未満の女性が塩化物泉に入浴することで、フィーカリバクテリウムの占有率の増加が見られたとしている。
いかがだっただろうか。今回の実証実験によって、温泉に入浴することで、泉種によらず各種疾病リスクを減少出来る可能性があることが実証された。このような科学的な検証結果を見ると、積極的に温泉に入ろうという気持ちになるのはわたしだけだろうか。