2022年11月23日、スイス連邦材料試験研究所(Swiss Federal Laboratories for Materials Science and Technology、以下Empa)は、テキスタイルセンサを衣服に埋め込んだシャツ型のウェアラブルセンサを開発したと発表した。では、このウェアラブルセンサとはどのようなものだろうか。そして、どのように役立つのだろうか。今回は、こんな話題について紹介したいと思う。
スタイリッシュなシャツのようなウェアラブルセンサとは?
以下の画像をご覧いただきたい。これが、Empaが開発したウェアラブルセンサだ。一見、スタイリッシュなシャツにしか見えない。では、このシャツにはどのような特徴があるのだろうか。
Empaによると、このシャツには導電性繊維が使われているという。この導電性繊維は、どれだけ伸ばされるかによって抵抗が変化する特徴を持つという。この特性を活かし、呼吸により胸部や腹部がどれだけ上下するかをシャツでセンシングすることを可能にし、呼吸活動をモニタリングすることができるというのだ。
この呼吸活動の継続的なモニタリングは、睡眠時無呼吸や喘息などの呼吸障害のある患者に対して特に役立つ可能性がある。またそのほかにも、手術後の回復期の患者や鎮痛剤での治療を受けている患者にとっても有用だという。
では、彼らはなぜこのようなシャツの開発を手がけようとしたのか。その要因には、Empaが以前から、健康状態を監視するためのセンサとして、たとえば、導電性または光伝導性ファイバを備えた柔軟なセンサに基づく診断ベルトなどを開発してきたことがあるという。
しかし、それらの開発にはいくつもの課題があった。それは、センサが快適に装着できない点、取り扱いが容易でない点、そして、見た目が良くない点だ。実はこれらの課題を解決したセンサでないと、正確なセンシングができなかったり、なによりも被験者が身につけてくれなかったりするのだという。そのためEmpaは、この点を改善すべく、今回のように見た目にもこだわった、スタイリッシュなデザインのウェアラブルセンサを開発したのだ。
いかがだっただろうか。このようなシャツが、医療現場、あるいは普段の日常生活で着用するインナーシャツなどに取り入れられる時代がそう遠くない未来に訪れるかもしれない。 余談だが、実は、このウェアラブルシャツに導電性繊維を刺繍することも可能で、その刺繍箇所を通じて外部の測定装置とのインタフェースも可能にしているというから驚きだ。