Shiftallは、メタバースに対応した防音Bluetoothマイク「mutalk」を開発した。マイクと言われて想像するものとは、だいぶ様相が異なるマイクだ。では、mutalkとはどのようなものなのだろうか。また、どのようなメリットがあるのだろうか。今回は、こんな話題について紹介したいと思う。
防音Bluetoothマイク「mutalk」とは?
昨今のコロナ禍により、オンライン形式での会議が当たり前になってきた。オンライン会議は、自宅以外から出席するケースも多々あり、外出先や移動の合間で設定された打ち合わせのために、カフェなどのオープンスペースや外出先のシェアオフィスなどで出席するケースも増えている。そのような場所でオンライン会議に参加する際、「静かな雰囲気の中で周りに迷惑をかけていないだろうか」「顧客の情報は漏洩していないだろうか」などと気になることがあるだろう。
オンライン会議のほかに、メタバースやオンラインゲームも読者の多くが楽しんでいるかもしれない。その中でボイスチャットで話していると、ついつい興奮してしまい大声を上げてしまうことはないだろうか。その声量によって周囲は驚き、注目を浴びてしまうこともある。
Shiftallは、そのような課題を解決すべくmutalkを開発。使い方は、話したいときにmutalkを口元に装着するだけ。これによって、声が外へと漏れにくくなるのだ。また、mutalkを机などに置くと自動的でマイクがミュートになり、持ち上げると瞬時にミュートが解除される仕組みで、アプリ上でミュートボタンを押す必要はない。さらにイヤホンジャックも搭載しているため、スマートフォンでも利用可能だ。
では、mutalkがどのようなものか詳しく紹介したい。重さは、183g(本体のみ)と軽量で、サイズは123mm×107.5mm×67mm。8時間連続での利用が可能で、iOS・Windows・Androidに対応しているという。
さて、mutalkが周辺に声を漏らさないための工夫はどのようなものだろうか。Shiftallによると、同製品はヘルムホルツ共鳴器の原理を利用しているという。ヘルムホルツ共鳴とは、ワインボトルやフラスコなどの上部にある空気の出入り口に横から息を吹きかけると「ボーッ」「ブーッ」という低温が鳴り響く現象だ。
この効果を利用した防音対策は、身近にも確認できる。その一例が、学校の音楽室や会社の会議室、コンサートホールなどで見かける、等間隔に無数の小さな穴が空けられている壁「有孔ボード」だ。有孔ボードは、空気の振動との摩擦で音エネルギーを奪い、熱エネルギーに変換することで音を打ち消す効果がある。この効果をmutalkでも利用することで、すぐ隣の席に座っていても何を話しているのか聞き取れないレベルまで、音量が低減されるのだ。特に、叫び声などの高音域(1600Hz〜2000Hz)帯においては、実に-30デシベル程度の消音効果を発揮するという。
Shiftallは、Bluetoothノイズキャンセリングイヤホンを使用した場合とmutalkを使用した場合の、騒音環境下での録音音声の比較動画をYoutubeに公開している。男性と女性それぞれの例が収録されているが、mutalkの場合は周囲の騒音がほとんど消されている。
いかがだっただろうか。mutalkの存在を知ると、さまざまな拡張要素や未来の動向が想像できる。唇の動きから言葉を読み取る読唇術が防止できるし、公共の場において周りに聞かれたくない会話もできる。さらに警護や軍事などのシーンでも、相手に気づかれずに秘密裏に指示や会話が可能だ。ほかにも、テレビ番組などの収録において、カンペによる指示ではなくmutalk越しであれば、音声で直接指示を耳に届ける形式での収録だってできるようになるだろう。導入できる市場が無限に広がるように感じる、大変興味深いテクノロジーだ。