2022年11月10日、JR西日本は、来春新設予定の「うめきた(大阪)駅」に設置されるトイレのDX化を推進すると、プレスリリースで発表した。ちなみに余談だが、11月10日は「いいトイレの日」らしい。では、このトイレのDX化とはどのようなものなのか。今回は、こんな話題について紹介したいと思う。
JR西日本が推進するトイレのDX化とは?
JR西日本は、うめきた(大阪)地下駅の2023年春開業を目指しており、同駅を「JR西日本技術ビジョン」の具体化に挑戦する駅と位置づけている。この技術ビジョンでは、「さらなる安全と安定輸送の追求」・「魅力的なエリア創出の一翼を担う鉄道・交通サービスの提供」・「持続可能な鉄道・交通システムの構築」の3つのありたい姿が掲げられ、約20年後の実現に向けて検討が進められている。
その上で、うめきた(大阪)駅をイノベーションの実験場「JR WEST LABO」の中心と位置づけて、新たな価値創造を推進し、経営課題や社会課題の解決に向け取り組んでいくこととしているのだ。
では、JR西日本は、具体的に駅のトイレにどのようなDX化を進めるのだろうか。その1つがトイレの満空室表示だ。移動生活ナビアプリ「WESTER」や駅などに設置されているデジタルサイネージにトイレの混雑状況を表示させることで、駅内の移動や乗り換えなど分刻みで行動している利用者のニーズに応えることができる。
もう1つに、トイレ清掃管理システムが挙げられる。このトイレ清掃管理システムはバカンと共同開発したもので、トイレに設置された満空検知センサ、トイレットペーパー検知センサ、水石鹸検知センサなどの情報を収集し、リアルタイムでのトイレの状況を確認し、清掃や管理を迅速かつ効率化するものだ。
先述したトイレの満室表示システムは、ここで挙げた満室検知センサにより表示されるものだろう。この満空検知センサは、トイレの扉の開閉状態を検出する手のひらサイズのセンサで、トイレ個室に後付けで設置できるものだ。また、トイレットペーパー検知センサは、6個ストックできる紙巻器に設置するもの。トイレットペーパーの個数の全数把握が可能で、残数の減少傾向を時系列データで取得可能だ。残る水石鹸検知センサは、水石鹸の残量を段階的に検知することが可能となっている。
いかがだっただろうか。筆者は、ある製造業の大企業の工場に往訪した際に、社内DX化の実証実験の一環として、トイレ満空室表示の取り組みを拝見したことがある。この取り組みはもちろん社員の視点が中心となっていたが、今回のJR西日本の取り組みは、乗客の視点はもちろんのこと、清掃員の方の視点も盛り込まれている点が素晴らしいと考える。
DX化を推進している企業はいま非常に多い。しかし、この清掃員という外注先の人員の視点でのDX化は意外と盲点かもしれない。そう感じさせられた素晴らしい取り組みだ。