2022年11月1日、Deep Consultingは、異常なデータが頻繁には発生しないような現場でも、異常を検知できるアルゴリズムの実用化に向けた研究の開始を発表した。ではなぜDeep Consultingは、このようなアルゴリズムの実用化に向けた研究開発を開始したのだろうか。今回は、こんな話題について紹介したいと思う。
少量の正常データセットからの異常検知を可能にするアルゴリズムとは?
Deep Consultingは、なぜ今回のような研究をスタートさせたのだろうか。
それは、製造業における検品工程の課題にある。これまでの異常検知の手法として、近年では、ディープラーニング(DL)による手法が盛んに研究され、実用化されてきた。しかし、DLによる手法は完璧ではなく、課題が残されているという。
その課題とは、正常であるデータと異常であるデータが一定数以上ないと、異常を検出する精度を高めることができないこと、そしてそれらのデータの収集に時間と工数がかかってしまうことだという。
そして、DLの導入段階における課題もある。それは、DLの経験者や知見のあるエンジニアが社内にいないと、異常検出のアルゴリズムを内製することが難しいことだ。また、アルゴリズムを外注するとしてもデータ収集は別で実施する必要があり、これも外注するとなれば、費用が高額になってしまうというデメリットがあるのだ。
そこでDeep Consultingは、上述した異常検知に関するDLを使った異常検知アルゴリズム構築の課題を解決すべく、少量の正常データからでもモデルを構築して異常検知を可能とする手法を発明し、実用化に向けた研究を開始したのだ。
今回彼らが手がけるアルゴリズムの特徴としては、まず、少量の正常データによる学習のみで異常検知が可能であることがある。さらに、システムの構築期間やコストを大幅に短縮することを可能とするという。Deep Consultingのアルゴリズムであれば、汎用的な特徴量を用いれば、異常データを学習せず少量の正常データのみの学習で事足りてしまうのだ。
彼らによると、このアルゴリズムは、自動車メーカーの生産ラインにおける電動機の故障検知や、家電メーカーの生産ラインの設備故障検知、電力会社の風車・太陽光パネルなどの発電機の故障検知などに活用できるとしている。
いかがだっただろうか。今後Deep Consultingは、同社が実績を持ち得意とする売上予測などの時系列データの分析や、動画データの自動モザイクAI「Masking-AI」などとこのアルゴリズムを組み合わせ、より広範囲なクライアントに向けてDLによる課題解決の支援を行っていくという。