2022年10月20日、チューリッヒは、個人向けの新サービス「カーボンニュートラル自動車保険」を開始した。最近流行りのカーボンニュートラルだが、この新サービスとはどのようなものなのだろうか。今回は、そんな話題について紹介したいと思う。

  • チューリッヒが提供を開始した個人向けサービス「カーボンニュートラル自動車保険」とは

    チューリッヒが提供を開始した個人向けサービス「カーボンニュートラル自動車保険」とは(出典:チューリッヒ)

カーボンニュートラル自動車保険とは?

まず、カーボンニュートラルについておさらいしたい。カーボンニュートラルとは、その字の如く、温室効果ガスの排出量を全体として正味ゼロにすることだ。「全体として正味ゼロにする」というのは、CO2をはじめとする温室効果ガスの排出量から、植林や森林管理などによる吸収量を差し引き、その合計を実質的にゼロにすることを意味している。2020年10月には、日本政府が2050年までにカーボンニュートラルの実現を宣言したことも記憶に新しい。

話を戻そう。では、カーボンニュートラル自動車保険とはどのようなものか。それは、チューリッヒの「スーパー自動車保険」に新規加入した個人顧客が、自家用車の走行距離に応じたCO2排出量をオフセット(埋め合わせ)することが可能なプログラムのことだ。ウェブサイトで車体の大きさや走行距離などを入力すると、CO2排出量とオフセット金額が算出されるのだという

ちなみに、CO2排出量の計算については、「Worldwide Harmonised Light Vehicle Test Procedure(WLTP)」および「New European Driving Cycle(NEDC)」をベースに算出されるという。また、排気量別の平均値は、欧州環境機関(EEA)の登録車データセットに基づいた欧州の実際の自動車保有台数から算出され、電気自動車の排出量は、同じくEEAが公表している電力網のCO2排出量平均から算出しているという。

そして、そのオフセット金額に相当する額のクレジットを購入することで、そのクレジットが日本国内外の森林保全活動資金に充当される。その上チューリッヒも、顧客と同じ額を日本国内の地方自治体やNPOなどの森林再生プロジェクトへ寄付するという仕組みなのだ。森林保全活動とは、例えば、北海道美深町における森林吸収プロジェクト、グアテマラのカリブ海沿岸地域保全REDD+プロジェクト、インドネシアのリンバ・ラヤ生物多様性保護プロジェクトが挙げられる。

  • カーボンニュートラル自動車保険の流れ。「ガソリンまたはディーゼル車」と「電気自動車」の2種から保険種別を選ぶことができるという

    カーボンニュートラル自動車保険の流れ。「ガソリンまたはディーゼル車」と「電気自動車」の2種から保険種別を選ぶことができるという(出典:チューリッヒ)

いかがだったろうか。驚きは、カーボンニュートラル自動車保険において購入されるクレジットは、国内外の森林保全団体の活動資金に充当されるもので、チューリッヒ保険会社の利益になることは一切ないという点だ。チューリッヒ保険会社がさきがけとなり、このような取り組みは今後活発になるのではないだろうか。