2022年9月27日、フエゴインターナショナルと日本大学生産工学部(五十部誠一郎教授)は、食用コオロギのタンパク質の肉様組織化に成功したとプレスリリースで発表した。では、食用コオロギを肉様組織化することでどのようなメリットがあるのだろうか。今回は、そんな話題について紹介したいと思う。

食用コオロギの肉様組織化に成功

フエゴインターナショナルらが成功した食用コオロギの肉様組織化。これは、食用コオロギを脱脂処理せずに乾燥粉末化したコオロギたんぱくと大豆たんぱくを原料にして、エクストルーダー(押出成形)処理を行うことで代替肉を作り出す、新たな方法だ。

まず、フエゴインターナショナルを紹介したい。千葉県を拠点とする同社は、食用昆虫の養殖や昆虫食の製造・販売を手掛ける。千葉県の睦沢町で生産を行い、地域の食品産業から発生する廃棄物をコオロギの飼料にすることで、食品ロス・処分エネルギー・生産コストを削減。そして今後、コオロギを地域の自慢の食材にし「高品質の栄養食」として世界へ届けること、さらには、地域活性化とともに、近い将来訪れるとされる地球の食糧難を緩和する事業へと挑戦している。

  • 食用コオロギの養殖や昆虫食品の規格製造を行うフエゴインターナショナル

    食用コオロギの養殖や昆虫食品の規格製造を行うフエゴインターナショナル(出典:フエゴインターナショナル)

では、なぜ、フエゴインターナショナルと日本大学生産工学部は、食用コオロギの肉様組織化に着手したのだろうか。

昆虫食は現在、地球規模での人口増加に伴うタンパク質不足の問題を解決する食品として注目が集まる。牛や豚、鶏などに比べ、餌の量・価格・生育期間・生育場所の確保などの生産上の課題、そして食品ロスなどの課題に対しても解決が期待されている。

しかしコオロギについては、価格や加工技術がネックになり、コオロギ食品の多様化がなかなか進まないという課題があるという。また、従来からのコオロギなどの昆虫食は、乾燥粉末の状態への加工から大きくから抜け出せていないという課題もあるという。

そこで、フエゴインターナショナルと日本大学生産工学部は、食用コオロギの肉様組織化技術を開発。これまで、コオロギスナックなどの菓子類が中心だったが、この肉様組織化によって、ミンチ・フィレ・ブロックなどに加工可能で、焼肉やステーキ、唐揚げといった商品への活用も目されている。

いかがだったろうか。コオロギという身近な昆虫からスタートしたフエゴインターナショナルの取り組みは、地域を飛び出し、最終的には地球規模の課題までも解決しうるのだ。 現在、フエゴインターナショナルはコオロギを連想させない商品も発売している。例えば、クリケットグラノーラはパッケージデザインも素晴らしい。次はどのような新しい取り組みを仕掛けるのだろうか。楽しみだ。

  • フエゴインターナショナルのクリケットグラノーラ

    フエゴインターナショナルのクリケットグラノーラ(出典:フエゴインターナショナル)