2022年9月27日、大阪公立大学は、再生可能エネルギーである太陽光と地球温暖化の原因物質であるCO2を利用して、生分解性プラスチックの原料である3-ヒドロキシ酪酸を合成することに成功したとプレスリリースで発表した。では、なぜこの生分解性プラスチックの原料合成に着手したのか、そして、今回成功した生分解性プラスチックの原料合成にはどのようなメリットがあるのだろうか。今回は、そんな話題について紹介したいと思う。
環境問題に貢献する生分解性プラスチックの原料合成技術とは?
プラスチックは、私たちの日常生活において必要不可欠なものだろう。しかし、プラスチックはその性質上、自然に分解するために数百年かかる物質だ。海洋プラスチック問題なんて言葉も耳にしたことがあるかもしれない。この問題を解決するのが生分解性プラスチック。このプラスチックであれば、微生物などにより分解されるので、環境にやさしい。
そして、生分解性プラスチックの原料の中では、特にポリヒドロキシ酪酸(PHB)が注目されている。このポリヒドロキシ酪酸は、3-ヒドロキシ酪酸を重合することで得られる物質で、水に不溶かつ強度のあるポリエステルとして包装材などによく使われるという。
そこで、大阪公立大学人工光合成研究センターの天尾豊教授と大阪市立大学大学院理学研究科2年の紀太悠大学院生は、この生分解性プラスチックの原料となる3-ヒドロキシ酪酸の合成に着手。しかも、再生可能エネルギーである太陽光と地球温暖化の原因の1つとなっているCO2を活用して合成することができれば、CO2を削減しながら生分解性プラスチックを作る方法となり、地球のプラスチック問題、そして地球温暖化の問題の両方に貢献できると考えたのだ。
少し詳しく見ていきたい。太陽光を利用した光酸化還元系と2つの酵素を組み合わせて、CO2と結合させたアセトンから約80%の高収率で3-ヒドロキシ酪酸を合成することに成功している。
さらに専門的に説明すると、光合成細菌中にアセトンカルボキシラーゼ(AC)と3-ヒドロキシ酪酸脱水素酵素(HBDH)という2種類の酵素を発現させ抽出し、色素と触媒で構成される光酸化還元系に加えた結果、CO2とアセトンを結合させ、ACの働きでアセト酢酸を生成し、そのアセト酢酸をHBDHの働きで3-ヒドロキシ酪酸に変換することができたという。また、アセトンからの州立は約80%と、人工光合成を用いたこの技術によって、高効率に3-ヒドロキシ酪酸を合成できることが明らかになったとしている。
なお同研究成果は、2022年9月7日にChemical Communicationsにオンライン掲載されている。
いかがだったろうか。多くの読者にもう一度伝えたいことは、再生可能エネルギーである太陽光と地球温暖化の原因物質であるCO2を活用して生分解性プラスチックの原料合成を成功させたこと。つまり、エネルギー問題、地球温暖化問題、プラスチック問題の3つを解決するすごい研究成果なのだ。