宇宙太陽光発電システムをご存知だろうか。SSPS(Space Solar Power System)という。昔からこの構想は提唱されてきたが、まだ実現はされていない。技術面、予算面といった困難な課題はあるが、日本では国として取り組みを開始している。
日本の宇宙事業の計画である宇宙基本計画工程表にもSSPSがしっかりと明記されている。また、第5次エネルギー基本計画にも記載があるのだ。
SSPSは、経済産業省、文部科学省、宇宙航空研究開発機構(JAXA)を中心に検討が進められている。また、京都大学の篠原真毅教授など世界を代表する研究者も尽力している。課題が多いと申し上げたが、実現までにはまだ時間がかかり、莫大な予算がかかる計画であることは間違いない。しかし、将来の新エネルギーとして夢の実現に向けて日本は尽力しているのだ。そんなSSPSについて紹介したいと思う。
宇宙太陽光発電システム(SSPS)とは?
SSPSとは、宇宙空間に太陽電池を設置し、マイクロ波を用いて無線で地上に電力を送り利用する発電所構想のこと。
太陽電池を宇宙空間に打ち上げ、高度3万6000kmの静止軌道へと投入する。太陽光からのエネルギーを受けて発電した太陽電池のエネルギーをマイクロ波に変換。送電アンテナで、マイクロ波をビーム形成、方向制御し、地球へと伝送するのだ。
地球では受電アンテナ(レクテナ)でマイクロ波を受電し、直流を交流へと変換し、商用電力網へと伝送するという構想だ。
では、SSPSとはどれくらいの規模になるのだろうか。SSPSのコンセプトや発電電力の規模などにも依存するが、例えば宇宙空間の太陽電池で100万kW級の原子力発電所と同等の発電施設と仮定しよう。すると宇宙空間には約2km四方の太陽電池パネルを展開しなければならない。そして地球上では、宇宙から伝送されるマイクロ波を受電する必要があり、この受電アンテナは直径4kmという規模のものになるという。
そして受電施設からは、パイロット信号を宇宙空間の太陽電池側に向けて送信しており、太陽電池側がこのパイロット信号を追尾に使用したり、この信号を受信していない場合はマイクロ波を地球指向方向へは伝送しないなどの安全設計もなされているという。
では、SSPSのメリットはなんだろうか。
化石燃料を使わないためゼロカーボンであることや将来にわたり枯渇しないエネルギー源であること、天候や昼夜を問わず発電できるため安定的な電力を得ることができることが挙げられる。
そして課題としては、技術的課題、コスト面の課題が多く挙げられるだろう。
それに加えて、マイクロ波の人の健康、大気、電離層、航空機、電子機器などへの影響、スペースデブリ、太陽フレアによる損傷や破壊への対処、運用終了後の安全な廃棄、再利用といった課題もある。
そして、静止軌道帯の軌道の確保や国際的な周波数調整といった課題もある。また、これだけの大型構造物を輸送する輸送技術、大型構造物の小型・軽量化技術、宇宙空間での建設技術、そしてこれらのコスト面だ。
これまでにSSPSは、さまざまな構想が提案されてきた。詳細は、別の機会にするが、例えば、下図のSPS-ALPHA。綺麗で幻想的なグラスに見えるが、見ているだけで想像力が膨らむ興味深いものが多い。
宇宙太陽光発電システムSSPSはどこまで進んでるの?
現在、日本では経済産業省が宇宙システム開発利用推進機構(JSS)を受託企業として事業が進行している。
2020年までの成果としては、大型宇宙構造物の構築技術に関する軌道上実証システムの基本設計を完了。そして、2021年以降は、実用化に向け、発送電一体型パネルの開発やマイクロ波無線送受電技術に関わる送電部の高効率化などを行い、将来の長距離大電力無線送受電技術への進展を図るとともに、これらの技術の他産業へのスピンオフを目指しているという。
また、SSPSの研究開発ロードマップも公表されている。2030年代は宇宙実証フェーズ、2045年以降を実用化フェーズと位置付けているようだ。
いかがだっただろうか。SSPSについて紹介した。概要にとどめ、わかりやすく記載したつもりだ。このような夢の計画が日本で進行していている。2050年あたりには、新エネルギーであるSSPSが実用化されていることを期待したい。