東北大学は、歯科金属アレルギーの発病メカニズムを解明したという研究成果を発表した。これまで、歯科金属アレルギーは、パラジウムが原因のひとつであるとされてきたが、パラジウムは材料学的に安定な貴金属であり、なぜ発病の原因となるのかは不明だった。では、東北大学が解明した歯科金属アレルギー発病のメカニズムとはどのようなものだろうか。今回は、そんな話題について紹介したいと思う。
歯科金属アレルギーの発病メカニズムとは?
東北大学加齢医学研究所の伊藤甲雄助教らは、札幌医科大学や東北大学薬学研究科と共同で歯科金属アレルギーの発病メカニズムを解明した。これまで歯科金属アレルギーの原因は、歯科金属で活用されるパラジウムが一因だと推測はされていたのだが、そのメカニズムが解明されずにいたのだ。
では、解明されたメカニズムはどのようなものなのだろうか。
歯科金属による治療には、パラジウムが使われることが多い。その要因の1つには、保険適用もされるという理由もあるだろう。このパラジウムは、材料的に安定な貴金属だ。しかし、酸性の食物や口内に残った食べ物の分解、口腔細菌の代謝産物によって、パラジウムは溶け出すのだ。
溶け出したパラジウムはその後、口の中の歯茎などの皮膚に浸透するという。そして体内のあらゆる場所にある樹状細胞がパラジウムにさらされると、MHCという免疫反応に寄与する遺伝子複合体が細胞内に輸送され、MHC上の抗原ペプチドが病原ペプチドに置き換わり、アレルギー抗原となる。そうするとアレルギー性T細胞(T cell)が活性化し、パラジウムアレルギーが発病するというメカニズムだ。
いかがだったろうか。これまで金属アレルギーの治療は、その原因が不明だったため、原因金属の置換や抗炎症薬投与などの対症療法にとどまっていた。しかし、今回の研究成果によって、歯科金属アレルギーに対する新しい治療法の開発が期待される。歯科金属アレルギーで悩まない世界が、そう遠くない未来に訪れることだろう。