東京大学らの研究グループは2022年7月27日、海底面の下を透視する技術を開発したと発表した。
この技術を有人潜水調査船「しんかい6500」に搭載することによって相模湾深海での実証にも成功したという。
では、この海底面の下を透視する技術とはどのようなものなのだろうか。今回はそんな話題について紹介したいと思う。
海底面下を透視する技術とは?
東京大学の水野勝紀准教授、海洋研究開発機構(JAMSTEC)の野牧秀隆主任研究員、CHEN Chong主任研究員、産業技術総合研究所(産総研)の清家弘治主任研究員らの研究グループは、海底面下を透視する技術を開発したと発表した。
そして、海洋研究開発機構の有人潜水調査船「しんかい6500」を活用して、静岡県初島沖の相模湾深海(水深851m~1237m)において、実証試験にも成功したという。
海底、深海は人類にとって未知の領域。そのため、海底面の下に生息する埋在性生物も重要な研究対象だ。
この埋在性生物の調査においては、従来から物理的に採取するサンプリングの手法が採用されてきたが、効率の悪さ、現場観察の困難さなどから深海の情報収集には限界があったという。
今回、東京大学らの研究グループは、超音波を使って、海底面下を3次元的に非接触・非破壊で効率的に調査することができる技術を開発。この分野の研究が飛躍的進むことが期待されるという。
この海底面下を透視できる装置は、海底調査ツール「A-core-2000」という。ジャパンプローブが開発した高周波の集束型超音波センサとアークデバイスが開発した専用の防水モーターを搭載した2軸フレームで構成されていて、250mm×250mmの範囲を500kHzの周波数の音を海底に連続的に照射しながら2mm間隔でスキャンニングすることで海底下を高い解像度で3次元的に可視化することが可能になる。
実際に、しんかい6500にA-core-2000を搭載し、相模湾西部の深海(水深851m~1237m)に広がるシロウリガイコロニー周辺を観測。幼体を含む約17個体のシロウリガイの空間分布とそのサイズを可視化・定量化することに成功している。
いかがだっただろうか。海底下における埋在性生物の埋没深度やその移動の様子は、深海底の堆積物の構造や地球化学的な物質循環に重要な影響を与えるという。
今後は、資源・エネルギー開発や気候変動が底生生物に与える影響の把握や地球化学的な物質循環の理解、水産資源の分布調査などに応用する予定だという。