音楽を聴くことでフィジカル、メンタルの両面において状態を改善する“音楽療法”はすでに知られている。
しかし、その医学的な効果の根拠については未解明な部分も多いという。カナダの企業、LUCIDはニューロサイエンスとAIを駆使して「音楽を薬にする」というソリューションを開発している。
では、この「音楽を薬にする」というソリューションとはどのようなものなのか、今回はそんな話題について触れたいと思う。
LUCIDの「音楽を薬にする」ソリューションとは!
音楽が好きな人であれば、音楽の不思議な力を理解することはそう難しいことではないだろう。つらい時、モチベーションを高めたい時、お気に入りの音楽を聴くことで、気持ちを変えることができる、そんな経験を持っている方も多いのではないか。
カナダのLUCIDは、そんな音楽の力を科学的なアプローチでビジネス化することを画策している企業だ。
実は、米国では人口の18%が不安障害というメンタルヘルスの課題を抱えていて、そのうちの36%程度の人しか治療を受けていないという実態があるという。
不安障害は、人体の循環器系、免疫系にも影響を及ぼすことも医学的にわかっているという。さらに、仕事において燃え尽き症候群に陥ってしまうビジネスマンの中には、そのまま疾患となってしまう確率が63%、緊急を要する治療が必要な事態に落ちいってしまう確率が23%にもなるという。これらの課題をLUCIDは音楽の力で解決したい、そう考えているのだ。
LUCIDは、「AMRS(Affective Music Recommendation System)」というユーザーが目的の気分状態に移行するのに役立つプレイリストを予測および生成する、深層強化学習ニューラルネットワークを開発。現在、特許を出願中だという。
このAMRSは、パーソナライズされた効果的で楽しいデジタル音楽を提供してくれるという。この提供された音楽は、オリジナルに作曲されたものや特別にキュレーションされたものを含んでいる。そしてこの提供された音楽によってどの改善したのか測定するために「BioMIR(Biological Music Information Retrieval)」というディープラーニング(DL)システムも開発。
これらのLUCIDが開発したソリューションによって、ユーザの不安を16%低減することができたという実績があるのだ。
いかがだっただろうか。LUCIDのWebサイトでは、オリジナル曲のサンプルも公開されている。
ある調査では、60%の人がストレスや不安を払拭するために、音楽に目を向けているという回答があり、音楽のポテンシャルを感じる。LUCIDは、アルツハイマー病に対するソリューションや療法にも今後事業展開していくという。
筆者は、このテクノロジーはメンタルヘルス市場を大きく変える可能性があると感じている。