三井化学は2022年6月22日、IBMが開発したAI「Watson」を実装し、三井化学製品の新規用途探索の実用を開始した、というプレスリリースを発表した。

では、なぜ三井化学はこのような取り組みを開始したのだろうか、今回はそんな話題について触れたいと思う。

営業活動にAIを活用、その意図とは?

三井化学が開始したAIを用いた新規用途探索。この取り組みは、三井化学の営業領域のデジタル・トランスフォーメーション(DX)を推進することで、自社製品の売り上げやシェアの拡大を目指すためだという。

現在、新聞やテレビ、雑誌、SNS、論文など世の中はさまざまな情報であふれている。これらの情報を三井化学は有効的に選別し活用しきれていないという実情があるという。

さらに、消費者や製品メーカーのニーズは、材料・素材の機能専門用語と異なるため、これらを結び付け営業やマーケティングに活用することは簡単ではないという課題もあるという。

そこで三井化学は、日本IBMと協力してAIのWatsonを活用することを決断。Watsonに搭載された自然言語処理能力やテキストマイニングの技術で、ニュース、SNS、特許などの多種多様で大量な情報、データを検索し、効率的に複合的に分析することが可能になったのだ。

具体的には、三井化学の営業現場で、材料・素材の機能専門用語から、消費者の声や特許などのデータとの相関を分析し、消費者や製品メーカーのニーズやベネフィットと結び付けることで、新しい用途のブレインストーミングとなり、これまでの勘、コツ、経験など属人的な要素や暗黙知のような要素に基づいた発想を超えて、新しい業界や分野へ、根拠に基づく提案型の営業・マーケティング活動を進めることができているという。

  • 包装材料に使われる材料のネットワーク相関図の例

    包装材料に使われる材料のネットワーク相関図の例(出典:三井化学)

こうすることで、例えば、食品包材に使われている材料が別用途として電子部品部材にも使える、建築材料に使われている材料が衛生用途にも使える、あるいは、半導体関連に使われている材料が調理設備にも使える、といった多くの新市場・新用途の発見が可能となるのだ。

いかがだっただろうか。三井化学では、次のステップとして、マテリアルズ・インフォマティクス(MI)と連動させ、市場開発から製品開発までのスピードを加速していくという。

さらには、先端デジタル技術を活用し、新しい事業DX・営業DXへチャレンジしていくという。とても興味深い取り組みだ。