英国ケンブリッジ大学のChristopher Howe教授は、藻類を使った生物太陽電池を開発したというプレスリリースを2022年5月12日に発表した。
「生物太陽電池」と訳した表現を使ったが、具体的にはどのようなものだろうか、どのような展望があるのだろうか、今回はそんな話題について触れたいと思う。
藻類を使った生物太陽電池とは?
英国ケンブリッジ大学のChristopher Howe教授が発表したプレスリリースの英語表記のタイトルは、次のようだ。
「Algae-powered computing: scientists create reliable and renewable biological photovoltaic cell」
「biological photovoltaic cell」を生物太陽電池と本記事では訳したのだが、では、この生物太陽電池とはどのようなものなのだろうか。下図を見ていただきたい。
大きさは、単三電池ほど。Christopher Howe教授が手元に持っているものがその生物太陽電池だ。
この生物太陽電池には、シアノバクテリアの一種のシネコシスティスと呼ばれる非毒性の藻類が入っている。この藻は、光合成をおこなっているときに、電流を流す性質があるという。
しかし、藻に光を当てない暗闇でも、藻は食物を処理することで、電流を流すことができるのだという。つまり、昼間でも夜でもこの藻は電流を流し続けることができるのだ。Christopher Howe教授は、この現象は、1次電池や2次電池ではない、あくまでも太陽電池と理解してほしいと付け加えている。
そして、今回のプレスリリースで報じられている内容は、この藻が発生させた電流は、アルミニウム電極を通じて、マイクロプロセッサに6ヶ月間もの期間、電力を供給し続けたということだ。ちなみに、この藻は1cm2当たり4μW強の電力を発生させることができるという。
今回の実験では、45分の動作と15分の停止を繰り返したが、その中でもマイクロプロセッサは6カ月以上動作し続けたため、シアノバクテリアを使ったとてもシンプルな電源で、マイクロプロセッサを動作させるのに十分な能力を持っているとChristopher Howe教授は結論付けている。
藻類の生物太陽電池の展望
では、この藻類の生物太陽電池はどのような展望があるのだろうか。今後、IoTの数は加速することだろう。2035年には1兆個にも達するという。そのため、小型でポータブルな電源は必要不可欠になる。
そんな課題にこの藻類の生物太陽電池は最適ではないだろうか?
例えば、現在の小型の電源として考えられる半導体などの太陽電池やバッテリーは、持続可能性という点で課題があり、いつか寿命を迎え、そして廃棄のときには環境に良くないというデメリットがある。しかし、この藻類の生物太陽電池であれば、リサイクル可能であり、安価、ある程度環境に対する耐久性もあるのだ。
いかがだっただろうか。またまた自然由来の環境にも優しいエネルギー源が登場した。この研究がさらに進めば、IoTの普及もさらに加速することだろう。