2022年4月26日、紙のようにペラペラなスピーカをMIT(マサチューセッツ工科大学)が開発した、そんなプレスリリースが報じられた。

みなさんがすぐにイメージされるスピーカとは、ヘッドホン、イヤホンなどに内蔵されているものだろう。しかし、今回MITが開発したスピーカは、このようなものとはまったく異なる。

では、MITが開発した紙のようにペラペラなスピーカとはどのようなものだろうか。今回は、そんな話題について触れたいと思う。

紙のように薄いスピーカとは?

普段わたしたちは、毎日と言っていいほど、スピーカを利用している。

例えば、自宅であれば、テレビ、PC、スマートフォン、ヘッドホン、イヤホンなどなど。外出先だと、カフェ、レストランなど天井に設置されているスピーカ、電車内の車内スピーカ、自動車内も然り。身近すぎて意識することがないほどだ。

これらのスピーカーの原理は、音声としての電気信号をコイルに電流として流し、磁場を生成。その磁場によってスピーカーメンブレンが振動し、その振動によって空気が振動して、音として我々の耳に届くというものだ。

では、MITが開発した紙のように薄いスピーカの原理はどのようなものだろうか。それは、電圧が印加されると振動する成形圧電材料の薄膜を使用している。この振動により空気を振動させ音として発生させるというものだ。

  • MITが開発した紙のように薄いスピーカ

    MITが開発した紙のように薄いスピーカ(出典:MIT)

では、この紙のように薄いスピーカは、どのように製造するのだろうか。

シート状のPETにレーザーで細かい小さな穴を開ける。このPETシートの片面にPVDFという圧電材料の薄膜をラミネートする。その後、真空下で熱を加えることで小さな穴の部分にPVDFの小さなドームが形成する。PETの穴のサイズを変更して、ドームのサイズを制御でき、半径が大きいドームは、より多くの空気を押しのけてより多くの音を生成するため、ドームが大きいほど共振周波数も低くなる。

今回のスピーカの重さは、10セントコイン程度。約2gというところだろう。厚さは、ドーム部分で15μm。振動の大きさは0.5μm程度という。

紙のように薄いスピーカは、スピーカー面積1m2あたり約100mWの電力しか消費しない。普通のスピーカーで同程度の音量を発生させようとしたら1W以上は必要だという。以下に動画を紹介する。実際に音を出している様子を見ることができる。是非ご覧いただきたい。

MITの紙のように薄いスピーカの動画

“薄い“スピーカの活用シーンは?

では、紙のようにペラペラなスピーカは、どのようなところで利用されるだろうか。MITのプレスリリースには次のような記載がある。

自動車の内部を覆ったり、部屋の壁紙を作成したりして、大型の超薄型スピーカーにできる。また、この紙のようにペラペラなスピーカは、フレキシブルなため、劇場やテーマパークの乗り物で3次元オーディオを提供することにより、没入型エンターテインメントにも使用できる。また、軽量で動作に必要な電力が少ないため、バッテリー寿命が限られているスマートデバイスのアプリケーションに最適だ、と。

いかがだっただろうか。MITから魅力的なテクノロジーが生み出された。

実用化されるとさまざまなデバイスの設計も変わるだろうし、我々の耳に入ってくる音も変わってくるのだろう。活用される未来が楽しみだ。