興味深いローバーが開発された。
開発したのは、Venturi Astrolab。このローバーは「FLEX」という。まずは月面での活動を準備しているのだが、将来の火星での活動も見据えている。
では、このVenturi Astrolabのローバー、FLEXとはどのようなローバーなのか、今回はそんな話題について触れたいと思う。
Venturi Astrolabの多目的ローバー「FLEX」とは?
まず、Venturi Astrolabについて紹介したい。
Venturi Astrolabは、米国カリフォルニア州を拠点とした宇宙スタートアップ。
スタートアップという表現が少しミスマッチかもしれない。というのは実はAstrolabは、アメリカ航空宇宙局(NASA)、SpaceX、NASAのジェット推進研究所(JPL)エンジニアなど高度な専門性をもったベテラン人材で構成されているという。
宇宙に関するテクノロジーについては、ワールドクラスのチームだ。
では、ローバーのFLEXとは、どのようなものだろうか。簡単にいうと“マルチ”に活躍できるローバー、つまり多目的ローバーなのだ。
まず、ローバーについて紹介したい。
ローバーの後方には人が2名まで乗ることができるスペースがある。
運転はジョイスティック式。もちろん、遠隔操作による無人運転も可能のようだ。そして車体中央部には、ペイロードを搭載できるスペースがある。
4つの特殊な車輪とサスペンションで、月面や火星などの起伏の激しい地形でも水平に保つことができ、また衝撃に対する吸収に関してもしっかりと設計されている。
ローバーの前方には、ナビゲーションシステムと、各センサが搭載されていて画像認識などにより、障害物などを検出しリスクを回避することができる。
ローバーの側面には折りたたみ式の太陽電池パネルが搭載されている。また、ジンバル式の高利得なアンテナも装備されていてこのローバーで直接地球と通信することも可能なのだ。
FLEXの“多目的”って?
では、”多目的”と説明したがどのようなことなのだろうか。
このローバーは、さまざまな形状のペイロードを何度も輸送することができる。FLEX Payload Interface Guideによると1.5m×2.0m×1.0mの大きさまで輸送可能だ。
重さは400kgくらいまで積載が可能。動画には月面基地を構成するモジュールを持ち上げ、接続し組み立てているシーンもある。また、垂直型の太陽光パネルの設置とケーブルの敷設もできる。さらには、クルーのレスキューにも対応可能だ。
以下の動画を是非ご覧いただきたい。この動画を見ていただければ、FLEXが他社が構想しているローバーとどのように違って何がすごいのかわかっていただけると思うのだ。
歴史的に、惑星探査車ローバーはそれぞれ特注されており、およそ10年に1回のタイムスケールで運用されてきた。そして、10年ごとに数十キログラムまたは数百キログラムのペイロードを着陸させてきたのだ。しかし、FLEXによって、毎月数百トンを月に着陸させることが可能になると、Venturi Astrolabはいう。
いかがだっただろうか。ちなみに、余談だが、月面に着陸したランダーからクレーンのようなもので、FLEXは月面へと下ろされていく。
このランダーはあきらかにSpaceXのStarshipだろう。FLEXは、月面計画をどのように実現すればよいかという課題をしっかりと把握し、その解決策、ニーズをしっかりと捉えた宇宙事業では珍しいタイプのソリューションプロダクトだと感じる。