ロープウェイに乗ったことがあるかたは多いだろう。

ロープウェイは、山を登ったり、観光地を移動したりと利用場所が限定されているのが一般的ではないだろうか。

しかし、「Zippar」というロープウェイは全然違う。世界各国の都市部の渋滞解消やインフラ未整備の新興国へ新しい交通手段としての利用が可能なのだ。

では、この自走式Zipparとはどのようなものなのか、今回は、そんな話題について触れたいと思う。

自走式ロープウェイZipperとは?

Zip Infrastructureが開発した自走式ロープウェイZipparはこれまでのロープウェイとはコンセプトがまったく違う。

ではこのZipparとはどのようなものだろうか。以下の動画をぜひご覧いただきたい。

Zipparのコンセプトムービー

一発でどのような交通システムかご理解いただけるだろう。

まず、黒を基調したスタイリッシュなデザインのキャビン。ここに人が乗ることができる。道路上に張られたロープに沿って軽快に移動していく。まるで電線をロープにして走っているのでは、と錯覚を覚えるくらいだ。乗り降りの駅も別々に準備され、次々とZipparがくるので、待たずに乗ることも可能だ。

このZipparの魅力は数多くある。それらを紹介したい。

まず低コストであること。軽量の支柱や搬器を採用することで、既存のモノレールに比べ、約5分の1のコスト(15億円/km)で済むという。そして整備期間も1年程度と短く実現できる。

もう1つは、柔軟な設計が可能な点。まず、普通のロープウェイのカーブは意外と制限がある。しかし、このZipparは、ロープとゴンドラが独立しているため、自由な設計が可能だという。最小曲率半径が10mと道路の交差点に沿ったカーブが可能だ。

さらには、拡張性に長けている点。例えば、電車を整備するためには、土地の取得に関する調整などを進めなければいけない。しかし、このZipparは、道路を拡張する必要はない。現在の交通を維持した状態で拡張可能だということだ。

そして、なんといっても安全性だ。道路の上を走っているので、交通事故とは無縁だ。そして、風速30m/sまで安定して運行できるというから驚きだ。

電車などでは、強風などで電車が止まってしまうことが年に数回あるだろう。しかし風速30m/sであれば、強風で止まってしまうという心配要素が1つ減る。

  • Zipparのデザイン

    Zipparのデザイン(出典:Zippar Infrastructure)

いかがだっただろうか。8人乗りモデルのZipparの試験開始のために試験用地を新晃工業の敷地と決定したり、リアルテックファンドやANRIから1.9億円の資金調達に成功したりと1/1スケールでの実験が本格始動する準備が整ったフェーズだという。

Zippar InfrastructureのCEO、須知高匡氏は、1.9億円の資金調達に成功した際のプレスリリースで次のようにコメントしている。

「今までは夢を語るフェーズでしたが、これからはそれを現実にして、世の中の役に立てるフェーズだと考えています。まずは、今年の秋の試乗会、そして2025年の運行開始まで、突っ走ります!」

また、才能溢れる人物が一人現れた。解決すべき社会課題を興味深いテクノロジーと斬新なアイデアで、多くの人をハッピーにする解決策へと導く姿勢、パワーに、さらに謙虚さも加わったすごい人物だと感じる。

  • Zipparの8人乗りモデルのイメージ

    Zipparの8人乗りモデルのイメージ(出典:Zippar Infrastructure)