富士通は4月5日、スペースデブリの軌道を精密に把握することができる新解析システムを開発し、JAXAの宇宙状況把握システム(Space Situational Awareness:SSA)において稼働を開始したと報じた。
スペースデブリは、宇宙ビジネスにおいて解決すべき課題となっているものの1つ。
富士通が開発を発表したスペースデブリの新解析システムとはどのようなものなのか、今回はそんな話題について触れたいと思う。
富士通が開発したスペースデブリの軌道を把握する新解析システムとは?
富士通が開発した新システムではまず、スペースデブリの観測を行うための観測計画を作成する。観測計画とはその字のごとくだが、スペースデブリをいつ、どの方向で、どのSSAを使って、どれくらいの時間観測するのかが示された計画のことだ。
その計画に基づいてJAXAのSSAである光学望遠鏡やレーダーでスペースデブリを観測する。
そしてそのSSAで観測されたデータから、スペースデブリの軌道を決定したり、スペースデブリの情報を管理したりするのだ。
SSAのレーダーは、より小さな物体を観測することが可能となるため、1日あたりの観測可能な物体数が従来の10倍以上に相当する約1万件になっているという。そのため、大量なデータに基づいて常に最適な観測計画を作成できるアルゴリズムを新規に開発したという。
他にもこれまで解析運用者が主に手動で行っていた観測計画の策定や観測データの処理など定常的な作業を自動で行う機能を新規に開発している。
そして、これらのスペースデブリの取得、管理された情報は、JAXAの衛星の軌道と比較し解析する。
スペースデブリと衛星との両者が接近する、という情報を検知したときには、衝突確率に加え、衝突を回避するための軌道制御に必要な情報を添えて、JAXAの衛星運用者に自動で通知することができるという。
そして衛星の軌道変更、軌道修正を速やかに支援することができるというシステムなのだ。
さらには、国が運用管理しているSSAと観測データなどの連携が可能な機能を新たに搭載したという。
富士通が持つ宇宙ビジネスの分野での強みの1つは、なんと言っても”軌道解析”、”軌道計算”。この強みをスペースデブリの分野でも活用することができるのだろう。
下の図をご覧いただきたい。スペースデブリの数の年変化を示しているのだが、2020年以降、急激に増加していることがわかっていただけると思う。これは、宇宙ビジネスに参入する企業、主に低軌道衛星ビジネス、ロケットローンチビジネス、宇宙旅行・宇宙ホテルなどのビジネスにとって重要な課題となることは間違いない。
いかがだっただろうか。富士通のスペースデブリを精密に把握することができる解析システムは、宇宙ビジネス業界においてもとても貢献度が高い。
従来から持つ強みを活かし、そして新たに改良を施しさらに新規要素を付加することでパワーアップしていく。富士通のスペースデブリ事業に注目したい。