2022年3月16日、ロンドンに本社がある世界最大級のメガバンク、HSBCとブロックチェーン・NFTを活用したプラットフォームの提供などを行うAnimoca Brandsの子会社、The Sandboxが連携するという発表があった。

その目的の1つは、HSBCがThe Sandbox上の仮想土地区画を取得するためだという。他にもPwC(PricewaterhouseCoopers)香港が、The Sandbox上の仮想土地区画を取得したというニュースもある。

では、なぜ各社は、仮想空間の土地を購入するのだろうか、今回はそんな話題について紹介したいと思う。

仮想空間の土地を購入する理由とは?

The Sandboxはご存じだろうか。

The Sandboxは、イーサリアムのブロックチェーン技術を基盤とした「ユーザー主導のゲームプラットフォーム」だ。ユーザーはメタバースの仮想空間においてLAND(土地)を購入したり、レンタルしたりすることができて、オリジナルのゲームやアイテム、キャラクター、サービスを作成することができる。

また、ユーザーは所有するLANDやアイテム、キャラクターをNFTとしてプラットフォーム上で自由に売買することができるのだ。

今回発表されたHSBCとThe Sandboxの連携の目的の1つは、HSBCがThe Sandbox の仮想空間上の土地を購入することだとしている。

そして、この連携に先駆けて2021年12月23日、PwC香港は、The Sandboxのメタバースの仮想空間において土地をすでに購入したという。区画のサイズや価格などの詳細は非公開だが、当時のThe Sandboxにおいて1区画は1万ドル(約110万円)で販売されていたという。

では、なぜ、HSBCもPwC香港も仮想空間上での土地を購入するのだろうか。

それは、新規サービスの開発と新規顧客の獲得はもちろんのこと、既存顧客への新しい価値の提供にあるという。

  • The Sandbok

    The Sandbok(出典:Animoca Brands)

具体的に言えば、メタバース上での不動産投資に近いだろう。

このThe Sandboxの上の仮想空間での土地、デジタル不動産を所有者は、レンタルとして提供することができる。不動産賃貸業に近い。ユーザにとって魅力的な空間であれば多く集客できる。その仮想空間をゲーム会社、イベント会社などに貸し出すのだ。

そして、不動産売買と同じ動きも考えらえるだろう。小口不動産投資もありうる。今のリアルの世界での不動産を利活用したさまざまなビジネスが仮想空間上で行われると考えると理解しやすいかもしれない。

今回のHSBCは、銀行としての不動産に関する金融商品をメタバース空間で行うことも視野に入れていての計画だと考えられる。

PwC香港は、Web3.0のアドバイザリーハブになることを目指しているという報道がある。これは、中央集権的な権限が及ばないWeb3.0の世界で、税務や会計という専門的なサービスを暗号通貨などに置き換え、The Sandboxを活用して提供することを考えていると推測できる。

いかがだっただろうか。

まだ、このメタバース上の土地の購入者は限定的だというがCoincheckとThe Sandboxも、Coincheckが保有するThe Sandbox上のLANDに、2035年の近未来都市「Oasis TOKYO」を制作するプロジェクトを開始している。

Oasis TOKYOは、”2035年の近未来都市”をコンセプトにしたメタバース×NFTのコミュニティ拠点で、日本を連想させる象徴的な街並みの中に美術館やステージなどさまざまなイベント施設を設置する事業だと言う。これも類似した動きだと理解できるだろう。