エアバスとCFMは2022年3月3日に、水素を燃料とする航空機エンジンを共同で開発し、実証実験に向けたパートナーシップを締結したというプレスリリースを発表した。
航空業界では、脱炭素化の取り組みが加速しているが、このエアバスとCFMの取り組みもそれに該当するだろう。
では、エアバスとCFMが共同で行う水素を燃料とする航空機エンジンの実証実験とはどのようなものなのか、どのような狙いがあるのか、今回はそんな話題について紹介したいと思う。
水素を燃料とする航空機エンジンとは?
エアバスは、もう説明不要だろう。フランスを拠点とする世界を代表する航空機メーカーだ。
一方、CFMは日本では馴染みがないかもしれない。CFMとは、正式にはCFMインターナショナルといい、GE(ゼネラルエレクトリック)とサフラン・エアクラフト・エンジンが共同で出資している合弁会社だ。
この水素を燃料とする航空機エンジンであるが、開発と実証に向けて大きく2つの課題があるという。
1つ目は、水素を燃料とする航空機エンジンを“確立”させることだ。
この“確立”という意味であるが、次のような意味を含む。それは、「技術開発という一面だけでなく、運用手法の確立、新しいインフラの構築、そして最後の難関となる製品の認証まで」だ。
実は、これはとても大きなハードルになるというのだ。ピンとこないかもしれないが、例えば1950年ころ、人類が宇宙開発をしていたときに直面していたのと同じレベルでの大きなハードルだという。
2つ目は、この水素を燃料とする航空機エンジンの温度差に関する技術的な課題だ。
水素の燃料は、航空機に搭載する際、体積専有率を考慮すると気体の状態ではなく、液体の状態で搭載する必要があるのだ。水素を液体にするには、マイナス253℃程度の極低温まで冷却する必要がある。そして、この液体水素を気化させて燃焼させて推力を発生するわけだが、このときに航空機エンジンのある部分は高温になる。
その温度差は、約816℃にもなるという。この温度差を克服するための熱設計、構造設計などは大きな課題であるが、エンジニアらは解決できると自信をみせているという。
エアバスとCFMのパートナーシップの狙いとは?
では、なぜエアバスとCFMは、水素を燃料とする航空機エンジンを共同で開発するパートナーシップを締結したのだろうか。
まず考えられるのは、上記で紹介した水素を燃料とする航空機エンジンの2つの課題を解決するためだ。
エアバスは2020年9月から水素で航空機を飛ばす「ZEROe」プログラムと名付けられた計画をすでに走らせており、先行して研究を始動している。また、CFMの出資元のGEは、ガスタービンなど、水素利用に関する技術や多くのノウハウを有している。1社ではこれらの課題解決は難しいと公言しており、お互いにパートナーシップの重要性を認識しているのだ。
そして、彼らは、2035年には、水素を燃料とする航空機エンジンを搭載した航空機の就航を目指している。そのマイルストーンとして、水素を燃料として使用した最初の試験飛行を2025年ごろに行うという目標に向けて、パートナーシップを強化し、ビジネス化を目指しているのだ。
いかがだっただろうか。日本でも宇宙航空研究開発機構(JAXA)が2022年から「水素航空機」の開発に着手している。未来には、CO2が排出されない航空機、そんな技術が実現していることだろう。